「今日、美樹っち来てないんスね。風邪ッスか?」
俺の質問にムッとする青峰っちにしつこく美樹っちのことを訊いたのが悪かったのか、「黙れ」と辞書で殴られた。けっこう痛かった。こういうときのラッキーアイテムが携帯電話のメール機能なんだなあと思いながら美樹っちにどうしたのか訊くと「検診です。今日の午後から学校に行こうと思っています」という丁寧で簡潔な文章がきた。思わず口元が緩む。が、青峰っちに悟られてはいけない、と真面目っぽい顔をした。真面目っぽい顔になっているだろうか。
13時55分から午後の授業が始まる。その五分前に美樹っちは学校に到着。青峰っちに手を引かれ、クラスの皆様が彼女に注目している中、席に着くとまず始めに俺に「こんにちは、黄瀬くん」と声をかけてくれた。得意な気持ちだ。
午後の授業を終え、放課後になると青峰っちが「部活行ってくるから。黄瀬みたいな変なやつと関わらずに待ってろよ」と俺を睨む。怖いよ青峰っち。休み時間は青峰っちのせいで美樹っちに話しかける人はいなかったが青峰っちのその言葉に、放課後も彼女に話しかける人はいなかった。みんな部活にいそいそと行った。教室には予想通り俺と美樹っちの二人になった。
「お兄ちゃん、黄瀬くんのことを変な人っていうの。可笑しいでしょ?ごめんなさい」
「まあ俺は青峰っちに嫌われてますからね」
「まだ部活、入ってないの?バスケとか」
「今はまだって感じっスね。見当はついてるんスけど、バスケ部に入ると青峰っちにいじめられそうなんで他の運動部ッス。バスケ部は最終手段ッス」
「そうね、お兄ちゃん、怖いもの」
笑みがこぼれる。美樹っちの朗らかな笑顔に癒される。こういう感じの笑顔、好きだなあ。下品にげらげら笑う女の子よりも、上品に笑み零す女の子の方が俺は好きだ。
「明日から学校くるんスか?」
「体調が良ければ明日からは朝、登校してみたいと思ってるの」
その言葉に嬉しくなる。朝から彼女を見たいと思った。
「そうなれば明日は朝からお話できるッスね!まあ体調の方が大切ですから気をつけてくださいッス」
「ありがとう、黄瀬くん優しいね。メールもありがとう」
「いえいえ!それにしても美樹っちと青峰っちってすごい違いッスよねー。兄妹でここまで性格が違うのはびっくりッスよ」
「そうかしら。兄妹ってあまり性格、似ないものだと思うのだけど」
「そうかもしれないッスね。漫画じゃないんスから」
微笑みあう。こんなくだらない会話をしていると、また時間を忘れて青峰にあってしまった。俺を睨む。やっぱ兄妹だからって似ないんだなあって思った。

蛍光イエローの気持ち
20120814
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