黄瀬くんが映画の主役に抜擢されたと聞いて最初はとっても嬉しかった。でも黄瀬くんから話を聞いているうちになんだかよく解らない気持ちになった。ラブストーリーの主人公。世間にどんどん知れ渡る顔。それがとんでもなく寂しく思えた。だめだめ、応援しなきゃ。
そんな事を考えているうちにオーブンがチン、となった。そうだ、今日はこの間花火を見に行ったメンバーでこの家で遊ぶんだった。急がないと、と先ほどあわ立てた生クリームを冷蔵庫から取り出す。さつきちゃんが二人をつれてくるまで予定ではあと30分。
はあ、と溜息をつくとリビングでのんびりテレビを観ていたお兄ちゃんがこっちにきた。心配させたかな、と笑顔を作る。
「どうした?手伝うか?」
「ううん、大丈夫。それにお兄ちゃん、こういうの苦手じゃない」
るせ、と小さく言ってわたしの頭をがしがしなでるお兄ちゃんの大きな手。もう、せっかく綺麗にした髪がぐしゃぐしゃだ。
イチゴの蔕をとって、みかんの缶詰をあける。ブルーベリーもだして、とにかくわたしの好きなフルーツをのせていく。
黄瀬くん、映画に出演するってことは学校に来る日が減るってことかな。遊ぶ日が減るってことかな。
はあ、ともう一度溜息をつくとお兄ちゃんに本当に心配そうに見られた。
大丈夫、大丈夫だからおにいちゃん。

表向きと裏の人
20121207
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