「えっ!主役?」
「そ、この間の取引の件。それに恋愛ものの映画。よかったじゃない、イケメンくん」
ふふっと足を組んで微笑む社長に台本をわたされ、ざっと役の概要を見る。
骨折で入院することになった主人公(俺)は病院の屋上で一人の少女(相手役)と出会い、恋に落ちる。彼女は不治の病で、それでも懸命に生きる二人。彼女の死に際、最期のお願いがキス、それでキスをした後に「ありがとう」と言って死んでいく。
……なんともありきたりな、どこかで見た事のあるような内容だ。絶対売れない、と思いながら承諾する。
「じゃあよろしくね、台本、読んどくのよ」
「ほーい」
事務所から出て彼女に早速メールを打つ。映画の主役になったって。
「あ……」
送った後に、キスをするとか、恋愛とか、そういうのが頭をめぐった。隠していても映画の主役をやるなんてすぐにばれるけど、なんだか少し嫌になった。
すぐに「おめでとう!とっても楽しみにしてるね」という返事がきたけれど、俺の心の中はもやもやしっぱなしですぐに返信が出来なかった。

映し出される刃
20121108
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