「黄瀬くんってどうしてこう、美樹ちゃんに告白しないの?」
唐突に訊いてきたのは桃っちだった。彼女とはいつの間にかメールアドレスを交換し、いつの間にか仲良くなった人だった。俺が学校で補習を受けて帰る途中、体育館から出てきた彼女と鉢合わせになって、途中まで一緒に帰ろうとしているときだった、彼女がそんなことを訊いて来たのは。
黄瀬くんってどうしてこう、美樹ちゃんに告白しないの?という言葉が脳を駆け巡る。勇気がないから?関係が崩れるのが怖いから?ファンに嫌がらせをされるのが怖いから?いろんな言葉が溢れてくるけど、しっくりくるものがなくて、うーんと眉間にしわを寄せる。どうしてだっけ、なんでだっけ。
「わかんないんス」
「え?」
「今はこう、付き合うとか、そういうのわからなくて。でも、美樹っちのことは大好きで。でも、付き合いたいとかじゃなく、一緒にいるだけで胸がいっぱいなんスよ」
桃っちは意味解らない、というふうに首を傾げた。
「だから、俺は美樹っちの隣にいるだけでいいんス。一緒にいるだけで幸せで、安心できて、心が落ち着くっていうか」
「でもね、美樹ちゃんは不安でいっぱいなのかもしれないのよ?」
「え?」
「黄瀬くんかっこういいし、モテるし、モデルだし、とられちゃうかもって不安かも」
桃っちのことばの意味はよくわかった。でも、彼女がそんな不安にかられているなんて思えない。
「でも、俺はゆっくり美樹っちと歩きたいっス。そんな急ぐ必要、ないと思うんスよ」
へえ、と桃っちは不思議そうに言った。
まだまだ俺たちはそんな距離まで心を詰めていないから。だから俺はもっと美樹っちの傍に寄りたいって思うんス。

優しい怪獣
20121107
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