「わあっ!すごく綺麗!」
どーん、と硝子越しに見える花火。打ち上げ時間だ。さきほどまでたこやきの取り合いをしていた三人も、花火を見て「おお、すごい」と目を丸くした。俺もこんな近くで花火を見るのは始めてかもしれないぐらい間近でみる花火に目を丸くする。
「黄瀬くん!すごいよ!わたしこんなのはじめてっ!」
中学生なのに、小学生みたいにはしゃぐ彼女。可愛いなあと眺めていると青峰っちが「こらそんなにはしゃぐと悪くなるぞ」と一喝した。ああそうだ、彼女は身体が弱いのだ。こういうところで気を使えなかったことに少し反省。
にこちゃんマークの花火とか、ハートマークの花火とか、珍しいのが打ち上げられるたびに彼女は感嘆の声をあげた。可愛いって。でも俺からしたら、そんな風に楽しそうな美樹っちのほうが可愛いんスけどね。
「黄瀬くん、」
いきなりぎゅうっと浴衣のはしを握られえる。どきり、と胸が弾んだ。
「美樹っち、どうしたんスか?」
「ありがとう」
彼女は本当に嬉しそうに目を細めた。いつもなら「いえいえこんなことーっ」とふざけたように笑うところだが、その手を握る。
「美樹っちもありがとう」
え?と何で感謝の言葉を言われたか解らない彼女は頭上にクエスチョンマークを並べた。俺はそれを紛らわせるように、「あ、星マークっスよ!」と花火を指差した。
彼女は再びすごいすごい、とはしゃいで頬を赤くした。

詰めあう距離
20121023
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