「ところでみんな好きな人いるのー?」
わたがしをもぐもぐ食べながらそう切り出したのはさつきちゃんだった。恋の話はあんまりしたことがない。小学校にあまりいけなかったのもあるけれど、私の知ってる男の人はお兄ちゃんとお父さん、あと親戚ぐらいだったから。
でも、さつきちゃんの言葉を聞いて最初に思い浮かべたのは黄瀬くんだった。つい顔が火照ってしまう。違う、黄瀬くんはお友達なのにそんなわけないのに。
さつきちゃんと私の視線がばちりと合う。暗くて頬の赤みはあまりわからないと思うけど、ちょっと不安になった。
「ボクはいませんよ、桃井さんはどうなんですか」
「えー、内緒だよ!きーくんは?」
「え、俺っスか?青峰っちはどうなんスかー?」
「いるわけねーだろ」
お兄ちゃん、バスケしか興味ないからなあ。
「美樹っちはどうなんスか?」
黄瀬くんの言葉に周りの空気が凍った、気がした。一気に体温が上昇してこれまでに感じた事がないようなドキドキと緊張が私を襲う。隣にいる黄瀬くんは顔を覗き込んできて、頬の赤みを隠すように手で頬をぱちんと触った。
「私は、そういうのわかんない」
それを言うのが精一杯だった。お兄ちゃんは「だよなー」とつまらなそうに言った。黒子くんもさつきちゃんもつまらなそうに笑う。
「ねえ、きーくんはどうなの?」
さつきちゃんの言葉にどきりとする。
「俺はっスねー、うーんと……内緒っス」
隣でへらへら笑う黄瀬くんの頬が少しだけ赤くなったのを私は見逃さなかった。
黄瀬くん、好きな子いるのかな。

君の世界の傍にいたい
20121010
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