電車にゆらゆら揺られる。美容室までは少しだけ電車に乗らなければならないらしい。私とさつきちゃん以外はみんな立っていて少し申し訳ない気分になる。お兄ちゃんが荷物は持ってくれているから全然重くないんだけど、私なんかが立っていたら迷惑になるだけかもしれない。
「美樹っち、気分悪くないスか?」
悩んでいると目の前で立っている黄瀬くんが少し屈んで私の顔を覗き込んできた。長いまつげ、とっても綺麗な髪。いいにおい。近い距離に少しだけどきっと心臓が揺れた。
「大丈夫だよ!」
ぶんぶん首をふると「よかったっス、次の次で降りるっスよ」と教えてくれた。
さつきちゃんとお兄ちゃんと黒子くんはなんだか楽しそうに別のことを話していてとても盛り上がっていた。
黄瀬くんと私だけが何も話さずぼうっとしてて、何か話さなきゃとは思うのに言葉が思いつかない。
目の前の黄瀬くんはとっても格好良くて、近くの女の子たちにちらちら見られていて、やっぱりモデルさんだから人気なのかなあ、と思った。
「ね、美樹っち。俺すっごく今日を楽しみにしてたんスよ!」
話を切り出してきたのは黄瀬くん。無邪気な笑顔。
「私もだよ!頑張ったもん」
熱下げるの、と言うと少しだけ心配した表情になったけど、すぐに今の体温を教えたら安心した表情になった。
今日は黄瀬くんの表情がコロコロ変わって、なんだかドキドキする。

電車に揺られる心
20121001
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