青峰大輝として生まれ、その時同時に青峰美樹が生まれた。夏の終わり、8月31日。その時の事など勿論覚えていないが、両親に聞いた話によると俺は元気に泣いていて、彼女は息をしていなかったらしい。運が良かったためかすぐに息をして泣き始めたが、検査におくられ、平均よりも少し弱く生まれたことが解ったらしい。それを聞いたときに俺が最初に思ったことは、彼女の体力はすべて俺が奪ってしまったんだということ。その少し前、5月4日に生まれた桃井さつき。家が近所だった事もあり、さつきとは生まれたときから一緒という感覚がある。しかし彼女がさつきと知り合ったのは小学三年生の頃。それまでずっと少し離れた病院に入院していて両親のどちらかが付きっ切りだった。その寂しさを紛らわすために俺は大人に混じってバスケを始めたのかもしれない。最初は趣味みたいなもんだたが、親に「上手くなって美樹に試合を見せたらきっと喜ぶわよ」と言われ必死にやった。強くなるのが面白くて仕方がなかった。美樹のことを半分くらい忘れて強くなった。さつきが応援してくれて、大人が俺に負けることも多くなってきた。それが楽しくて、高校生とかにもバスケ誘われて。そのへんから彼女の病院に行く事が少なくなった。
そんなある日、彼女が帰ってきた。久し振りに会った彼女は俺の浅黒い肌と比べられないほど真っ白で、弱弱しかった。その時初めて「俺が守らなきゃ」と思った。小学生のくせに格好いい決意だったと今でも思う。
しかし帰った後もほとんど部屋から出ることはなく、バスケやってさつきと帰って着替えて飯食ったあとに彼女の部屋に行って話をする程度だった。さつきがたまに一緒に夕飯を食べた。そのときに初めてさつきは美樹に出会った。ストバスなんて誘えない。彼女は退院後だというのに一ヶ月くらいで入院生活に戻った。彼女がバスケを見に来ることは小学三年生の頃にはまだありえなかった。
しかしそこから少しずつ入院と退院を繰り返しているうちに、彼女が急に「お兄ちゃんがバスケやってるところ見に行きたいな」と言い始めた。親は反対したが、一度だけ、ということでさつきと俺と美樹ででかけた。その日の試合は俺と高校生四人対俺が勝ったことのないどっかの高校のスタメンだった。彼女に格好いいところ見せようと必死に頑張ったが試合は五点差で負けた。帰った後寝る前に、少し調子が悪くなったが次の日には回復していた。彼女は俺に「お兄ちゃんすごいんだね!」と興奮気味に話してくれて嬉しくなった。
それから中学に入って、テツを家に呼んだ時に美樹がテツと仲良くなって、美樹が初めて学校に行ったときに黄瀬と仲良くなったんだったかな。

些細な事で体調を崩す彼女を守れるのは俺だけだと思っていたが、このごろは違うらしい。黄瀬、という新しい存在が彼女を守る。それがこの頃、少しだけ気に入らない。「兄として妹の幸せを祈ってやるのが一番大切だ」が俺の隠れた持論である。黄瀬と関わる事で美樹が嫌な思いをするなら今のうちに引き離したい、しかし彼女は黄瀬に少し依存している部分がある。依存と言っても、黄瀬も依存しているからいいのかもしれないが、なんかこう、もやもやしたものが離れない。これでいいのか?
俺の幸せが一体なんだったのか思い出せない。バスケをすることか?妹といる事か?どちらが一番の幸せだったか、わからない。

不特定多数の幸福
20120906
文章だけで申し訳ないです
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