美樹っちと青峰っちと別れてから自分の浴衣も買わないとな、と黒子っちと電車に揺られた。いきつけの着物屋で浴衣を買おうと企てている。黒子っちも新しい浴衣がほしいと言っていたからちょうどいい。桃っちも誘ったが金欠らしくダメだった。ガタンガタンという単調なリズムと独特の揺れに眠気が襲う。黒子っちもいるんだから寝ちゃダメだと自分に言い聞かせながら携帯電話を開いた。ちょっと前に新しくしたばかりだからディスプレイがぴかぴかだ。
「黄瀬くんは美樹さんのことどう思ってるんですか」
俺のことを覗き込むように、俺の心を見透かすような、そんな目と声に携帯を落としそうになった。危ない。ていうかなんで美樹っちのことなんか訊くんスか、と笑って誤魔化そうとしたところで無駄なのだ。だから黒子っちのこの目は苦手。全部解ったような目で。
「黄瀬くんは美樹さんのこと好きなんですね」
「何でそう思うんスか?」
逆に訊くと、黒子っちは可笑しそうに笑った。その台詞が一番そのことを強調してますよ、そう言って遠くを見た。
「美樹さんのことしっかり守ってあげてくださいね」
「……黒子っちはなんでそう、美樹っちと俺のこと応援してくれるんスか?青峰っちは美樹っちのこと大切に思ってて、俺はモデルで。それだと彼女に迷惑がかかるっスよ。青峰っちにも美樹っちにも」
「黄瀬くん、そんなことありませんよ。彼女も黄瀬くんのこと好きですよ」
「え、」
「あ、今のは特別な意味、ではないです。そこまで深くは僕にもわかりませんし。ただ一ついえるとしたら、彼女は黄瀬くんを気に入ってるから突き放したりしないであげてください、ということです。黄瀬くんは自己犠牲が好きそうですから忠告です」
「自己犠牲って……」
「あなたが傷付く事は彼女も傷付くって覚えといてくださいね」
黒子っちがどこまで彼女の事を知っているかは解らないが、その言葉はきっと確実なものなのだろう。

乱反射の太陽
20120903
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