黄瀬視点
「何でも似合うんスね!美樹っちは!」
「そんなことないよ!」
照れくさそうに笑う美樹っちは手に持ったボーダーのロングTシャツを見た。何着も何着も試着して、店員さんに「可愛い」と褒められた彼女は白い頬を真っ赤にしていた。熱があるのか心配したが、彼女が常時持っている体温計で熱をはかったら36.2と低すぎるくらいだから安心した。彼女にはどんな服でも似合う。どんな色でも似合ってしまう。真っ白な肌だからかもしれない。
「どれがいいと思う?」
モデルの黄瀬くんなら流行に疎い私よりもいいのを選んでくれるでしょ、と彼女は苦笑した。
どれでも似合う、好きなの選んだらいいのに。でも、彼女は俺に頼っている。だから真面目にうーん、と考える。こんなに頭を使ったのは初めてかもしれない。彼女の体調についても考えてやらなければいけないし、露出が多いのはいただけない。青峰っちに殺されるし。ていうか、長袖の方がいいのかもしれない。夜だし。
「浴衣とかもいいんじゃないスか?」
「え、でもわたし、歩きにくいし電車とか乗ったら慣れてないから崩れちゃうよ?」
「じゃあこうしないっスか?行き帰りは私服、むこうの美容院で着付けてもらって花火大会は浴衣!ここの近くに知り合いの美容院あるんで無料でやってくれるっスよ!」
「それなら…でもいいの?」
「いいんスよ!」
「じゃあ私服と浴衣、両方選ぶ!」
じゃあ、と先ほど試着した中でも俺の気に入った、コーディネートを彼女に見せる。
セーラーっぽい、薄い長袖のパーカーとボーダーのTシャツ、スカート。
彼女は「私もそれ気に入っていたんです!」とにっこり微笑んだ。どうして彼女はこうも俺の心をわしづかみにするのだろうか。
「じゃあ買ってくるっス」
そう言ってレジに向かい財布を出すと彼女は慌てふためいて「自分で払います!」と言ったが「格好すけさせてくださいっス」と笑って勝手にお金を払った。
「絶対返します!」と言い続ける彼女の言葉をよそに鼻歌を歌いながら浴衣コーナーへ行く。彼女は少し諦めたように溜息をついた。そこで無理矢理俺のかばんにお金を突っ込んだ。まあ、しょうがないか。律儀でいい子だから。
「そうだ、美樹っち!浴衣は自分で選ばないっスか?」
「え、なんで?」
「浴衣姿は当日のお楽しみってことで!」
お願いのポーズをしながら「ね?」と言うと彼女はうーん、と唸った後に「じゃあそうします!」と笑った。そこにちょうどよく青峰っちが来たから俺は退散する事にした。浴衣は兄弟仲良く選べばいいっス。

生半可なボーダーライン
20120901
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