七月上旬。日曜日の朝10時。
「これで全部か?」
「うん、これだけだよ」
急用で帰ってこれなくなった両親の変わりに、退院の準備を手伝ってくれるおにいちゃん。あまり荷物は持ってきていないはずだったけれど、黄瀬くんの持って来てくれたぬいぐるみ、雑誌、まだ食べていないお菓子がいっぱいあったため、お兄ちゃんに手伝ってもらわないと帰れない状況になっていた。お兄ちゃんは荷物をまとめながら黄瀬くんに「こんなに貢ぎやがって」と嘆息しながら頑張っていた。私は服(といっても下着とパジャマ二セット)と洗顔用具を袋に詰めた。お兄ちゃんが力持ちだからって荷物を全部持ってくれた。それから、病院の先生と看護師さんたちに挨拶して病院を出てタクシーに乗った。病院から出たのは久々で、外の空気が気持ちいい。
「ほら、携帯電話。使いたかったろ?」
お兄ちゃんはそういって、私に携帯電話を渡してくれた。電源をいれるとすぐにメールが入る。黄瀬くんだったらどうしようと思い閉じると、お兄ちゃんは大笑いし始めた。
「黄瀬とメールアドレス交換したのなんか知ってるっつの!そんな隠さなくても」
「お兄ちゃんもしかしてメール見たの?」
「違う。おまえと黄瀬の反応見てたらすぐわかった。ていうか黄瀬の顔見りゃすぐわかる」
お兄ちゃんは笑い泣きしながら言った。
お兄ちゃんはむかしから、私のことならなんでもお見通しだ。こんなところもずるい。
それから、タクシーをおり、門をくぐる。5月に花壇に種をまいたひまわりの葉がとっても大きくなっていた。身長も高い。つぼみもつけて、もう夏だなあって。
鍵を開け、リビングにむかって真っ直ぐ進む。扉を開けるとそこはなんだかカラフルだった。
「退院おめでとー!!」
そろった声、飾られたリビング。黒子くん、さつきちゃん、それから黄瀬くん。
吃驚してどうしていいかわからない私の手をさつきちゃんが握って「会いたかったよ美樹ちゃん!」と言い、後ろから黒子くんが「おめでとうございます」と言って、その後ろから黄瀬くんが困ったように笑った。
「こんな事しか思いつかなかったっス」
「黄瀬くん、ありがとう」
ちょっと泣きそうになった。

そのあと黄瀬くんたちとケーキを食べたりテレビを見たりした。黄瀬くんはずーっと笑顔で私の向かい側に座っていた。今日のケーキは黒子くんと黄瀬くんの手作りらしく、甘くて美味しかった。
「来週は絶対学校行くね!」
そういうと、やっぱり黄瀬くんは笑顔で、「待ってるっス」と言った。お兄ちゃんが黄瀬くんの頭部を「調子乗るな」と殴った。

「ありがとう」
小さく呟くように言った言葉はみんなに聞こえただろうか。
ひまわりのような笑顔
(わたし、ひまわりが一番好きな花なの)
20120825
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