黄瀬くんが来てくれた。お兄ちゃんが黄瀬くんを少し認めた気がした。
前までおにいちゃんは黄瀬くんのことを変なやつ、って言ってたのに、この頃なんだか黄瀬くんを認めてる、気がする。この前の調理実習だって、私が黄瀬くんを誘う提案をしたとき嫌な顔一つせず「誘って来い」と言ってくれたし、病院が暇、学校に行きたい、黄瀬くんや黒子くんやさつきちゃんとお話したい、とワガママ言ったら黄瀬くんにここを教えてくれた。病院も病室も黄瀬くんに内緒にしておくんだろうなって思ってたのに。
お兄ちゃんと私の間には、あまり会っていなかったせいか、変な距離感がある。でも、お兄ちゃんは私に優しくて、私はおにいちゃんが大好きなのだ。このままの距離感でもいいかもしれない。でも、ちょっと寂しい。
お兄ちゃんには内緒だけど、今では少しだけ、黄瀬くんとの距離がお兄ちゃんと私の距離よりも少し近いように感じる。
「うっス!美樹っち!」
「こんにちは!黄瀬くん」
にっこり笑って彼を迎えると、今日は彼の手に紙袋。お菓子やお花は持ってこなくていいって言ったのに、いつもプリンやケーキを買ってきてくれる。
「新しい雑誌っス。この前の撮影のやつが届いたんスよ!」
「この前の!黄瀬くんかっこよく撮れてるね!」
ほらここここ、とページをめくって自分のうつっているところを見せてくれる。黄瀬くんの笑顔、真面目な顔、おちゃらけた顔、いっぱいだ。
「ねえ、黄瀬くん。私、退院が決まったの!っていっても退院して一週間は学校に行けないんだけど、明後日退院」
「おめでとうっス!これでまたメールできるっスね!」
にっこり笑う黄瀬くん。でも少し複雑な気持ちだった。これから一週間会えない。入院中はほぼ毎日会っていたのに、ちょっと寂しいよ。
「うん、」
「あ、退院祝い、何がいいっスか?」
首をかしげる黄瀬くんだけど、私は首を振った。今までたくさんの入退院を繰り返しているのに、こんな一回のためにそんなことしなくてもいい。
「気持ちだけでいいよ」

カーテンの隙間から
20120825
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