黄瀬視点
帰りのHRを終え、かばんに教科書を詰め込むと、青峰っちが隣から「今から行くのか」と訊いてきた。頷けば、「花とか持っていくなよ、花粉は喘息ダメだから」と教えてくれた。花を買おうと思っていた俺は青峰っちにすっげー感謝してかばんを持つ。「あざっス青峰っち!」とお礼を言うと、クラスのやつらは驚いた目で俺たちを見てきた。仲が良いのか悪いのか解らない、という目。
そんなこと今の俺にどうでもよかった。学校前のバス停近くにあるケーキ屋さんで、彼女が何がすきかわからず、とりあえずクッキーとマドレーヌの詰め合わせを買った。造花とリボンで少し飾ってもらい、バス停に戻るとタイミングよくバスが来た。それに乗って、独特の揺れに揺られながらラッピングされたお菓子を見る。少し多すぎたかもしれない。でも、青峰っちも一緒に食べればいいか、と思った。
病院前のバス停で降りて、病院にむかって走る。病室前まで言って、深呼吸を一つ。彼女にこれから会う。鏡を見て、髪の乱れをなおし、ノックをする。彼女の病室は一人部屋だった。
「はい、どうぞ」
彼女の声が聞こえ、ドアをゆっくり開けるとパジャマ姿の彼女がいた。布団の中に入っていて、机の上には吸入器が置いてあった。
「黄瀬くん!?」
彼女は驚いて、身体を少し布団で隠した。
「青峰っちから聞いて驚いたっスよ、もう」
大丈夫っスか?と笑って言えば、今は大丈夫、という回答が返って来た。うん、いつも通りとはいかないけど、元気そうでなりよりっス。
「これ、青峰っちとでも食べてくださいっス」
「え、あ、ありがと!大切にする、よ」
しどろもどろになりながら両手で受け取る彼女。「美味しそう」と微笑んだ。
「本当に大丈夫っスか?」
「黄瀬くんが来てくれたからもう大丈夫だよ!」
「俺が来てくれなかったら死んでたみたいな言い方心臓に悪いっスよ」
「ご、ごめんね。よかったら一緒に食べない?せっかく来てくれたんだし、時間大丈夫?」
「俺なら暇っスよ、またお話するっス、いつもみたいに」
そう笑うと、彼女は「嬉しい」とまぶしく笑った。でも、少し違ったのが咳がたまに聞こえたこと。
その日は18時ごろまで彼女とお話して、青峰っちがお見舞いに来てくれたところで帰る事にした。彼女に「また来るよ」って言ったら「ありがとう」と言われたので、絶対来ようと思った。

優しい空気
(お兄ちゃん、ありがとう)(礼なんか言わなくていい)
20120824
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