「この頃何だか楽しそうですね」
「お兄ちゃん…、そんなことないですよ。普通です」
「でも、前より柔らかくなりました」
お兄ちゃんに真太郎の話をすると機嫌が悪くなりそうだから、真太郎の事は殆ど話したことがありません。最初のほうだけです、話していたのは。お兄ちゃんが眉間にしわを寄せるものだから、彼のことはなるべく話さないようにしています。
お兄ちゃんはこの頃新しく読み始めた本をぱたりと閉じてソファを立つとキッチンのほうへ行きました。
わたしはテレビをつけます。とは言っても夜のトーク番組はあまり好きではありません。わたしが好きなのは恋愛ドラマです。
「またそのドラマ。そんなに面白いですか?」
冷蔵庫からフルーツを二人分取り出してきたおにいちゃんは溜息交じりに言いました。
「だって面白いから…お兄ちゃんは好きじゃないの?」
「いいえ、そんなことはありません」
でも、と笑ったお兄ちゃんはとても悲しそうでした。
でもの続きは言わずに再び本を読み始めるお兄ちゃんに、でもの続きは聞けませんでした。

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20121215
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