「ということで、今日のお兄ちゃんは機嫌が悪いのです」
「朝から大変だったな」
はあ、とお互いに溜息をつけばお兄ちゃんと目が合った。主将さんの配慮で控え室に入ることが許された私は真太郎の隣に座った。お兄ちゃんは向かい側に座っていてたまに目が合う。不機嫌そうに口を尖らせて隣の席の青峰くんを攻撃していて青峰くんが不憫に見えた。ごめんなさい青峰くん。青峰くんともちらりちらりと目が合うけれどここは見なかったことにするのがいいでしょう。
真太郎はというと今日のラッキーアイテムの白いリボンをしたピンク色のうさぎのぬいぐるみを抱きかかえている。なんともいえない。いえ、少し可愛いです。綺麗なのにいつも怖いお顔をしている真太郎がファンシーなぬいぐるみを抱きかかえているだなんて。くすりと笑みを零すと怪訝そうな表情で「なんだ」と問われました。いいえ何も、とこたえます。
今日の試合相手の事なんかを主将さんが話していますがわたしにはよく解らないのできいているふりだけしておきます。
主将さんが話し終わってみんなぞろぞろと会場にうつります。わたしも体育館の上から見学しようと席を立つと主将さんは「ああ、留里さんもこっちで見たらいいよ」と声をかけられました。マネージャーの桃井さんが偵察のために他のチームを見るため席が一つ空くらしいです。遠慮なく座らせていただくことにしました。今日のスターティングメンバーは主将さん抜きの四人とお兄ちゃんらしいです。でもいつも通りすぐに引っ込めるけどと主将さんは笑いました。
「お兄ちゃん相変わらず機嫌が悪いです」
もう、と真太郎の隣で呟くと、真太郎はわたしに白いリボンをしたピンクうさぎのぬいぐるみを押し付けました。見上げればわたしよりはるかに背が高い真太郎が照れくさそうに眼鏡のブリッジを上げて「試合中持っていてくれ」と言いました。わたしも照れくさくなって、でも「いいですよ」と了解しました。

手を伸ばしても届かないくらい
20130209
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