神涙図書室 | ナノ




  ほろ苦いティータイム



「完璧に行き詰まった……」

 誰もいない研究室で、ユリウスは呟いた。新しい錬金術の術式を考案していた紙をくしゃくしゃと丸め、叩きつけるようにゴミ箱へ放り込む。

 休む事なく使い続けていた頭が重い。ひと仕事終わった、休憩中に摂取しようとしていたケーキの包みを、仕方なく開ける。一休みしなければ、良い案など浮かびそうもなかった。

 一緒に用意していたコーヒーを淹れると、包みから取り出したショコラケーキを一口食べる。予想していたより苦い味が舌に染みた。

「やっぱりチーズケーキにすれば良かったか」

 学院の売店では売り切れていたチーズケーキ。どうせ糖分を摂取するなら、好きなものを選びたかったが、それだけのために街まで行くのはユリウスにとっては無駄足にすぎない。余っていたショコラケーキで妥協したが、食べ慣れないほろ苦さ。コーヒーと合わせて摂取するには、甘味が足りない。

 明日の休憩にはチーズケーキを手に入れよう。そう心に決めると、コーヒーを飲みながら、術式の考案へと意識を移した。

...fin


2019/06/11 加筆・修正



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