神涙図書室 | ナノ




  No title...






future story(if story)

 どうして、結婚したのか? 訊ねれば、こちらを見て少しだけ驚いたような表情を作った。しかし次の瞬間にはその顔は困ったようになり、斧の手入れをしている手元に目線を戻す。それにつられて、自分も目線を相手の手元に送る。そのまま、黙り込まれてしまうかとも思ったけれど。

「……彼女が伸ばした届かなかった手を、掴んでやりたいと思った」

 呟くような声に顔を上げる。少しの沈黙のあと作業の手を止めて、だがこちらを見ることはなく、ゆっくりと口を開いた。

「戦場に身を置いて、恋愛というものをしなくなって長かったからな。歳の離れた彼女に、今さら心が動くとは思わなかったが」

 低い声に、少しばかり呆れたような、けれど優しい音が含まれたように思う。

「それでも最初は、危なっかしい存在だと。生徒のように見守っていたつもりだったのだがな」

 “母”の最初に伸ばした届かない手の行方や、そこに至る経緯など、突っ込んで聞きたいことはあったけれど。斧の手入れの続きを始めた“父”はもう口を開く気配はなく。要するに“父”のような大人でも恋は落ちるものだったのか、と。興味深い事実に勝手に納得しておくことにして、ただ黙って頷いた。

end

父⇒ギムレット・カルナヴェル
母⇒ルシル・プライム(Thanks! 魚住なな様宅)




ぼんやりとイメージしてたギムレットの話。
こういう話を誰にするんだろな……と考えた結果子供だった。もしもこういう未来があったら語るかな、というお話。





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