神涙図書室 | ナノ




  忘れたくない思い出



 彼女は、見たことがないほど柔らかな笑みを浮かべた。愛しい、と。この人と共にありたいと、心の底から湧く感情に、それでも、どこか諦めにも似たような、複雑な感情を飲み込む。

「……忘れたくないな」

「忘れられない、ではなくて?」

 "忘れられない"とは、言えない。忘れたくない。消えないでほしい。

「イサ、わたしはね……」

 願いは、虚しく。

 end




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テーマ「人外ファンタジー」
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