神涙図書室 | ナノ




  オウキとスメラギのお菓子の日



「オーキ」

 間延びした、柔らかい声に、オウキは振り返る。するとニコニコと笑うスメラギがいて、なに? と返す。

「はい、今日はお菓子の日やろ? 用意したけ、食べよーや」

「お菓子の日って……別に、そこまで子供じゃないし……」

「初等部以下の子供やけ、オーキよりお兄さんお姉さんもまだもらってたで?」

「だとしても別に、子供じゃないし」

「子供やよ」

 笑みを含んだような、それでも力強い声に、反らしていた目線を上げた。想像に違わない優しい笑顔で、お菓子を差し出すスメラギ。

「オーキは、僕の子供やよ」

 な? と、撫でられた頭。
 
 それは、これからもずっと?
 大きくなっても、子供じゃなくなっても、俺はスメラギの子供でいて良いの?
 
 その言葉は口に出せないまま、今はただ、黙って差し出されたお菓子を受け取った。
 
 end



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