ヨウスケの世界精霊の日
そういえばもうすぐ世界精霊の日か、と。ヨウスケは日付を確認した。一般的な知識しかないが、使魔に妖精を喚んでいる身としては、ほんの少しばかり気にする日。
「エルザ」
今は姿を消している使魔に呼び掛けてみると、なあに? と小さなその身を出現させた。
「いや、もうすぐ世界精霊の日だったなと」
「ふふ、律儀ねぇヨウスケは」
「まあ、世話にはなってるからな」
「良いのよ。言ってしまえばそういう契約だもの。それに、そういったイベントは私達自体には馴染みのないものなのよ?」
まあ、それでも、とエルザは続ける。
「あなたやトウタくんやクノンちゃん、3人が健やかであってくれたら、それで私は嬉しいわ」
柔らかく微笑む使魔に、そうか、と返す。
「まあ、あいつらも世界精霊の日にはエルザに会わせろって言ってたから」
「あら嬉しい。同室のトウタくんはともかく、クノンちゃんなんて暫く会ってないものね」
「……そうだったかもな」
ぼんやりと返事を返すと、エルザは腰に両手を当て、眉を上げた。
「もう、ヨウスケったら。幼馴染みだからって安心してたら、あっという間よ? ライバルはね、トウタくんだけじゃないのよ全く」
「うるさいうるさい」
目の前を飛び回るエルザの姿を背に、世界精霊の日を口実に、ぼんやりと幼馴染みの事を思った。
end
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