ウルリカの花祭り ◇
花でも贈ってみようかしら、と。魔術科教師、ウルリカはぼんやりそう思った。世間的な行事であり、学院の行事でもある花祭り。業務上仕方なくその場に身を置いていると、ある人物の姿が思い浮かんだのだ。
ヤコウ・センジュエン。ふとしたきっかけで彼の過去や此処へきた経緯を知ることとなり、彼なら、自分を終わらせてくれるかもしれないと、ことあるごとに声を掛けるようになった。のらりくらりと躱されてはいるが、どこか確信めいた予感がする。
きっと彼は、自分を殺すのだろう。
彼はきっと、自分が待ち望んだものを与えてくれる。だから、感謝の花でもと、のんびりと空を眺める。降ってくる花びらや花達を、やんわりと両手で受け止めて。
「降ってくるために咲いたのではないのにね?」
綺麗だと、はしゃぐ者達に聞かれたら何と言うだろう。
置かれた場所で咲きたかった花は、この中にどれだけいるのだろうか。人の手でねじ曲げられた運命を、呪いはしないのだろうか。それでもこれが自らの運命だと、綺麗に散るためにその身を風にさらして舞っているのだろうか。
そんなふうにぼんやりと考えながら見上げた空から降る花は、とても綺麗だった。
end
Thanks!
文月ゆと様宅 ヤコウ先生
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