神涙図書室 | ナノ




  ローガとカレンの花祭り ★



「ローガ兄ちゃん、お花あげる〜〜!」

「おー、サンキュ」

 差し出された花を受け取り、頭を撫でてやると、男の子、レオは満足そうに駆けていった。
 花祭り。行事の一環として学院でも行われている祭事の日、ローガは保育科の子供達の相手をする業務に回されていた。
 降ってきた花を拾い集めたり、教師達に配ったり。ころころと興味を移しつつ遊んでいる子供達をのんびりと見守りながら、レオに貰った花を他の子供達に貰った花と一緒に水に浸ける。

「あ、カレン先生にもあげる〜〜!」

 ふと、聞こえた名前に振り返る。子供達に囲まれながら、貰った花をありがとうと受け取るその保育科教師、カレンを見つけた。

 渡しても、良いものなのだろうか。

 子供達に貰った分とは別に、降ってきたものを避けて置いてある花を眺める。降らせた花を渡しても良い、という行事ではあるが、降らされている花達は、それように集められた、商品化できない所謂わけありの花。折角渡すならきちんとした花を用意したいとは思うのだが、そもそも臨時で保育科に顔を出すような同僚教師からそんな風に花を貰うものなのだろうか。それに、花を渡すなんていう習慣も何もなく暮らしてきてしまった今までの生活、用意するにしてもどうするべきか何も浮かばない。

「あ〜〜……阿保らし」

 ぐるぐると、我ながらまるで思春期の学生かと突っ込みたくなるような悩みに、頭を振っていると。

「はい、ローガくん」

 今まさに花を渡そうかどうしようかと逡巡していた相手がそこにいて、こちらに花を差し出していた。

「いつも、お手伝いありがとうね」

 にっこりと微笑んで頭を撫でられてしまえば、やっぱりそうくるよなぁと、どこか余裕が戻ってきて。どーも、とその花を受けとる。

「じゃあ、こっちからも。ハイ、お疲れさん」

 こちらからも花を渡す。それを受け取り、ありがとうと微笑む相手を見て、来年こそはもう少しスマートに用意できたら、と。そんな未来を願った。

 end

Thanks! 魚住なな様宅 カレン先生



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