ハゼルとソニヤの花祭り
今まで"供える"ものでしかなかった花を"渡した"
怒ったような悔しそうな泣きそうな、複雑な表情を浮かべ、それでも大事そうにその花を握りしめる。
降り注ぐ花の中、少しだけ距離を置いて座る。
「……花が綺麗だなんて、覚えなくても良いと言われたの」
ぽつり、と溢された言葉。
「……覚えなくても、知らなくても、綺麗だと思ったのよ、そのときは」
空から降る花達に視線を向ける。
「綺麗と感じる心なんて邪魔だったの。好きと感じる心なんて邪魔だったの。認めてもらえなかったの。だからひとりで生きてきた」
だから、と呼吸を置いて。
「感じないと思っていたわ。花を貰って嬉しいなんて」
ずいぶん遠回りをして告げられたおそらく感謝の言葉に、そうか、と返す。
それきりお互いに黙り込み、彼女は時折、くるくると花を回し、じっとそれを眺めていた。
end
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