ヘルガ
【ずるいひと】(ヘルガ⇒ベルノルト)
……――この子は、独りで泣くのかしら。
悲しげな背中は、きっと私を求めていないことは知っていた。それでも、抱き締めずにはいられない。その、迷子のように小さくなる身体を、優しく包むように慈しむ。ピクリと震えた身体は、一瞬だけ、温もりを拒むように硬直した。
「……まるで、迷子の子猫ね」
耳元で甘くささやけば、回した腕を掴まれた。
狡い人だと、思うのに。
向き合って覗き込まれる、寂しげな瞳に、抗う術などありはしない。
...end...
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