朝靄に祈る
同じ瞳をしていると、そう思っていた。
ハゼル教師。黒魔術の副指導教師として、度々接点はあった。お互い特に会話をするでもなく、業務連絡だけを交換して別れるような、そんな存在。ただ、度々交わす視線で、片方だけの彼の目が、自分と似た感情を映しているのを、クラハは感じていた。
朝靄の霊園。冷たい空気と、水の臭い。幻想的なその空間に、その影が現れた時、ああ、とクラハは納得した。やはり彼は、自分と同じなのだろうと。朝靄に溶けそうな透明感のある佇まいが、いつもよりやけに頼りなく見えた。
すれ違い様に目が合い、会釈を返す。少しだけ驚きを宿したように見えた深い青は、同じように浅く頭を下げた。
ただそれだけのやり取りが、なんだか妙に心地よく、安心できて、少し悲しい。振り返ると、朝靄に消えていく後ろ姿。その後に、言い様の無い切なさが胸を襲ってくる。無意識に、左胸を押さえて。
貴方の愛した人が、安らかであるように祈ります。
...fin
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