ヤマアラシ★
ギーゼラは、顔をしかめた。
『近くにいただけなの。わたしの自己満足だから、どうか気にしないでいて』
そう言って、庇われた事を思い出す。学院都市で買い物をしていたら、近くの外壁が崩れてきた。近くの一般人を守ろうとしてうずくまった私の、更に上から覆い被さるように身を呈して、庇ってきた人。自らが傷付きながら。傷の手当てもさせてくれなかった。
「ギリア、先生」
なんとなく、いつも気にかけてもらっていた事は知っていた。それが、私の生い立ちによるものであろう事も知っていた。わたしは、そんなに不憫な人間なの。貴女にそこまでしてもらわなきゃいけない人間なの。私は、貴女のほうこそ心配なのに。悲観的で、自己犠牲的で。全部、貴女が悪い訳じゃない、私には負い目なんていらない、それに気づいてほしい、なのに。伝わらないし、変われないし、歩み寄れない。お互いに心配なだけなのに、近づいては、傷付くような。私も私で、まだ貴女のその感情を、受け入れる事もできない。
ヤマアラシのジレンマ。
私達、針が刺さらないちょうど良い距離を見つけることは、まだできないみたいね。
...fin
Special Thanks...
ギリア・ロードクロサイト(魚住なな様宅)
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