君の事を考える時間★
「あ、ミュリエルさん。良かった、会えた。はい、これ」
「これは……?」
四角い箱に、包装紙とリボン。そこそこ大きめのそれを、ルビーことフォエルビーはミュリエルに渡した。
「この間名前の意味教えたお菓子、学院都市のお店で実物見つけたから、買ってきてみたんだけど……」
「あ……バウムクーヘン、ですか?」
学院都市のお菓子屋さん。大きなバウムクーヘンを見て、ミュリエルと、木のケーキとはなんですか? そんな会話をしたのを思い出して、思わず買ってしまったお菓子。渡そうか、どうしようか。学院に行って、会えたら渡そうか、どうしようか。いや、よし、渡そう! そう決心して学院に来ると、見知った姿を見つけて。ほっとしたような、そわそわするような。できるだけ平静を装って声を掛けたら、きょとんとしながらも、興味深そうな、そんな顔。やっぱり買ってきて良かった、とルビーは笑う。
「本当に切り株みたいなんだ。だから、木のケーキ、でバウムクーヘン」
「……ルビーさんは、色んな事を知っていますね」
受け取った箱を抱えてひとつ頷くと、感心したようにルビーを見上げる。そんな姿に頬を掻きながら、いや、まあ、と照れ臭そうに。
「そうかな? でも、最近はきみの質問に答えてあげたいなぁとか、これはきみが喜びそうかなぁって、考えてる事が多いかな。バウムクーヘンもなんかつい買っちゃったし」
「……それは、常に私の事を気にしてくださってると、そういう、事でしょうか?」
純粋に、疑問、と。そんな顔で小首を傾げたミュリエルに、ルビーは固まる。
「え…………あれ? え……っと」
「ルビーさん?」
「……あ、いや、えっと! じゃあ、とりあえず渡したから! リトヴァさんとでも食べて!」
少し赤面して走り去るルビーに、あ、と言う間もなく。お礼を伝え損ねた事を思い出すが、抱えた箱を、寮に持ち帰ることにした。
……ーーーー……
「と、いう訳です」
寮の部屋で、どーんとずっしりしたバウムクーヘンを渡されたリトヴァは。
「そこで、一緒に食べようくらい言えないのかしら……」
「?」
「なんでもないのよ。切り分けてお茶淹れるわね」
感謝祭では、気を回してあげても良いかな、と。ちょっと先の事を考えてみたりした。
...fin
special thanks...!
ミュリエル・カルディコット 魚住なな様宅
リトヴァ・ハールス 魚住なな様宅
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