残念なイケメンの恋★
職員室の一角、研究室の鍵を取りに来ていたユリウスは、やかましいほどの足音に、何事かと振り返った。立ち止まったユリウスを猛スピードで追い越して行ったのは、ファビオ。目指す先には、もちろん。
「ベルデリーフ先生っ、今日も可憐なお姿を拝見し、愛らしいお声を拝聴しにファビオがやって参りました!」
「あらファビオ先生、今日もお疲れさま」
にっこりと微笑んだベビーフェイスに、ファビオは悶えた。
「ああもうっ、貴女に労って頂けるだけで僕は午後の授業も頑張れます……!」
「ふふ、そう言ってもらえると私も嬉しいわ」
「今、僕がどんな気持ちかお分かりだろうか? 潰すくらいの勢いで抱きつきたい」
「あらあら、それは困ったわね」
「もちろん、今はそんな常識はずれな事はしないが、いつか受け入れてもらったその時には、覚悟しておいて頂けたらと! 名残惜しいが授業の時間です、それではっ!」
来たときと同じように、やかましいほどの足音を響かせ、猛スピードで去っていった。
「相変わらず、もの凄いアプローチですよね」
微笑んだのは、アニェーゼ。
「あれは逆効果なんじゃないのか?」
ユリウスが、理解できない、とファビオが消えた方を見る。
「あら、ユリウス先生は、きっと本気で人を好きになったことや、本気で好きって言ってもらった事がないのね?」
ベルデリーフは、言いながら少し頬を染めた。
「え、何、あんたアレに傾きかけてる訳?」
「アレとか言わないの。あの人は真剣なんだから」
うわぁ、とユリウスはベルデリーフを見て、アニェーゼに視線を送る。アニェーゼも、ふふ、と笑った。
「女は、情熱的なアプローチに弱いんですよ」
「情熱的を通り越してると思ってたんだけど……女ってわかんねー」
やれやれ、と肩をすくめた後で、まあ、と呟く。
「あんたのお陰で、俺に構ってくる事がなくなかったから、それは感謝してるけど」
「あらユリウス先生、もしそれが寂しいって感じたら、それが恋よ?」
「阿呆か、死んでもあり得ない」
ふふ、と笑ったベルデリーフは、そうね、と考える。
「私は、この先もしファビオ先生が私にアプローチしなくなったら、寂しいのかしら、清々するのかしら……?」
「その答えは、ベルデリーフ先生がしっかり考えていけばいいと思いますよ?」
柔らかく微笑んだアニェーゼと対称的に、あほらし、と呟いたユリウスは、取りに来ていた鍵を手に、研究室へと足を進めた。
...fin
special thanks...!
ベルデリーフ・ディーゼル 3390様宅
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