どこかの世界線、生真面目な弟の話
『あの方のために、世界を壊しにいくの』
優しかった姉は、少女のようにそう微笑んだ。
過去へ渡る事例は聞いていた。ひとつは、ティエラの力。本来の秩序のために、この世界と過去の世界を一度に"守る"ための力。もうひとつは、ムンドゥスの力。過去の世界を壊して、今の秩序を"守る"ための力。
詳細は聞かされてはいないが、過去の地球が望まれない終わりを迎えることで生まれたこの世界は、過去の地球を救うことで、本来迎えるはずだった未来の軸に戻れるらしい。それが、ティエラの力。
しかし、過去の地球が望まれない終わりを迎えないと"この世界"はそもそも生まれなくなる。今この世界のために、過去を壊すか。正しい未来のために、過去を守るか。その決断を迫られる。
辿った流れは間違っているが、救済される未来のために過去を救うか、辿った流れは正しいが滅ぶ未来のために過去を壊すか。
間違いなく、前者だと、思っていた。壊れたものや人を沢山見てきた。こうならない世界が、未来が、道が、分岐点が、あるなら。それに手を伸ばすべきだと。
『姉さん……??』
『あの方は世界そのもの。世界がそう望むのだから、手を貸すのは当然だわ。たとえ、何万人の命が尽きてもね。私達には関係の無いことよ?』
何かが変わるなら、良い方向に行くものだと。
疑いもせずに何かを信じていた頃には、もう戻れはしない。
「……後戻りはできない」
手段など、もう選べはしない。
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