どこかの世界線、後悔の話
「……あいつ、しんだの?」
さなきは、ぽつり、と言葉を落とした。
躊躇っていた言葉を、いざ音にしてみると、現実味のないままただ空間に溶けた。
光の消えた瞳で横たわっているのは、龍宝の身体。ただそれは、龍宝の魂が天音の魂を肉体から追い出し、天音の身体と龍宝の魂が同化することで、完全な"リンカー"としての能力を、個体で得たから。天音の魂は"能力"として龍宝に吸収され、この世界から消えた。言わば、死んだに等しい。
すみません、と告げた、もはや天音とも龍宝ともいえない姿の、意志の強い瞳が焼きついて離れない。続いて浮かぶのは、テレビで見た天音の礼儀正しい姿と、実際に会ったときの生意気な少年の姿。
「確かに、いけすかない奴だった。でも、こんな風になって良いとまでは思ってなかった」
きっと、まだ。言えていないこと、聞いていないこと、そんな、些細なことがたくさんあった。天音だけでなく、龍宝のほうにも。
もっと言い合って、ぶつかって、喧嘩して、そうやって、何かを深めていくはずではなかったのか。
「なんで? どこなら、間に合ったの?」
涙すら出てこないさなきに、声を掛けられる人はいなかった。
...if story.end...
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