シラハセの話
しくっちゃったなぁ、と。遠のく意識で苦笑する。
そんな、どこか楽観的とも取れる自分の思考に呆れてしまう。悔しくないわけじゃない。もっと生きたい。カガミの隣を歩きたい。
何のために自分はこの世界にきたんだろう。この世界の闇は、ムンドゥスだけでは無かったのかな。それに呑み込まれた自分が甘かったのは仕方ない。
だけど。
それより何より、自分がいなくなった後のカガミが心配だ。オレが死んじゃうのは仕方ないけど、カガミはどうなるんだろう。誰か。誰か。
「それが、あなたのねがい?」
わかった、と。消えゆく意識に語りかけたのは、金髪の少女。うっすらと願った事を、ぼんやりと反芻する。
カガミを思えば、死んだオレのことなんか忘れてしまった方が良かった。なのに、願った、願ってしまった事は。
「……ごめん、カガミ」
怒らないでね。泣かないでね。
オレはもう、生きることできないけど。どんな形であれ、きっとキミの記憶にいられることが、今は少し嬉しいんだ。
end.
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