クラハのイメージ文 笑っていなければ、と思っていた。 腫れ物に触るように声を掛けてくれる者、遠巻きにこちらを見てくる者。それを、鬱陶しいとは思わない。寧ろ、それがヒトの優しさなのだとも思う。有り難いと言えるほどの強さはまだないけれど。 "貴女は悪くなかった" 誰が言ったのかももうわからないけれど、その言葉が、呪文のように心に落ちた。 いつしか、笑うことを思い出した。笑ってさえいれば、他者の視線がこちらへ向かないことを覚えた。声を掛けられれば反射のように作られる笑顔。それでも、そうとさえしていれば、深く何かを訊かれることもなかったし、相手の空気が、ホッとしたように和らぐことも学んだ。 乗り越えられた気がしていた。全て許されたような気がしていた。 いつしか、ふと気づく。自分は、こんな風に笑いたいわけではないのだと。笑おうとしなくても笑えていたあの頃。泣こうとしなくても、泣けていたあの頃。 上手く、笑えていると思う。少なくとも、他者が気を遣うような仕草や空気は大分減ってきた。それでもその笑顔は、あの頃のものではない。あの頃のようにはきっと笑えていない。 貴女は悪くない、と。優しくて暖かいその言葉に、救われて、許された気になっていたけれど。違う。 どうしたって、私が悪い。ああいった結果を生んで、それを止めきれなかったのは私の意思。それが悪くないというならば、この世の何が悪なのだろう。 許されたいとは思う。許してもらえることをありがたいとも。けれどきっと、許されたいだけではない。私が悪いと、認めてほしいのだ。だからといって、私は悪くないと言ってくれる、この人達を裏切るような真似もできない。悪くない私でいたいとも思う。けれど。 貴女が悪いと、言ってくれないだろうか。 誰か1人でも良い。全部貴女が悪かったのだと。 我ながら、幼い甘えだとは思う。他者から責められ、それに酔い、安心したいのだ。そう、全部自分が悪かったのだと。 そんな甘えを口に出すことはできないし、そんな甘えを許しては貰えないのだろう。それでも、全部貴女が悪いと言ってもらえたなら。 全部私が悪かった。 私は被害者なんかじゃない。 それを認めた上で、改めて許されたい。 なんて、身勝手な甘えだろう。 悪かった私を認めてくれたら、楽になれるのに。悪くない自分でいるのには、少しだけ、疲れてしまった。 +++ 言わせるなら誰だろうかと考えていた名残。 カーナーはクラハを悪いとは言わないで、許しを与えるような存在。言ってあげたら楽になるんだろうな、とは思いつつ、遠回しにしか関わらないかな。ただただ懺悔を聞いて、悩みの相談には乗る。主観は、悪いって認めることがさほど必要だとは思わない。許されたいと願った時点で、罪は許される。でも別に主観を押し付けず、客観的に見て相手がどういう人間か、どう思ってるかというのも理解はする。考えはするけど、囚われはしない。だから、私には貴方はこう見えてますよっていうのは言わない。否定されるのはわかってますし。他人の主観なので。 だから、カーナーはクラハを悪いとは思わないけど、自分を悪いと思うクラハを認めてもいるので、悪いとは言ってあげられないけど、悪いと思ってるクラハの懺悔を聞く的な……?? 難しいな。 ルークイーズはそもそも別に悪いとか悪くないとか許すとか許さないとか、クラハの過去や罪自体に興味が無い。立場や考え方が変われば悪いも正しいもないですし。そもそも私ごときが他人の善悪を決めること自体がおこがましいというか、どの口がって話ですから。 ハゼルはな……失った辛さも、どうしようもない憎悪も、それでも生きなきゃいけない遺された者の道みたいなのも全部なんとなくわかるから"悪い"とは言ってあげられないな〜。 ウルリカは本気で言うんですよ。貴女が悪かったんでしょと。他者を救いたいなんて、自らの力を過信して陶酔して偽善的で、挙げ句に守るべき存在が自分達に牙を剥いたら、それを自らの手で壊した滑稽な存在。そんな貴女だけが幸せになるの? と。 でも出会う時期的に、それにはもう立ち向かえるようになってる。 セルジオも言うだろうな〜。あんたが悪い。相性が良いと知りながら黒魔術の素養を得るからそうなる。殺傷魔術がそういう場面でどう働くかを1度でも考えなかった訳はないだろう。人の利己的な欲を考えなかったのもあんたらの甘さ。励まそうという気は全くない。けど、ばっさり言ってもらってすっきりするのもありかな〜と。 エトワ、セナ、アミュエル |