※注意
この小説は「Don't laugh !」のもがくさんの小説の続きを書かせていただいたものです。まずはもがくさんの「星の旅人」からどうぞ!




ヒロトの姿が見えなくなった後、俺は崩れ落ちるように膝をついた。
久しぶりに見たヒロトは以前にもまして白くなってて、生気というものが感じられなくなっていた。痩せた体、あちこちにのこる傷。痛ましくて直視できないような姿で、それでもヒロトは笑ってた。

「みどりかわ」

嬉しそうに俺の名前を呼ぶヒロトに本当は抱きつきたかった。
でも、出来ない。

「早く帰った方がいい、みんなが待ってる。」

出来るのは、そう言ってヒロトを追い払うことだけ。
"こちら"と"あちら"を隔てる壁は、案外脆い。俺がヒロトに手を伸ばせばきっと、ヒロトをこちらへ引きずり込んでしまっただろう。
俺はまだ、ヒロトにあちらで笑っててほしい。出来れば、俺の分まで。


あの日。俺が星となった日。
真っ暗な世界で俺はずっとヒロトの声を聞いていた。

どうして、どうしてこんなことに。俺がついてたのに、どうして。ああ緑川お願いだから目を覚ましてよ。また笑ってよ。ヒロトって呼んでよ。俺の手を握り返してよ。一緒にサッカーしようよ。ずっと一緒にいられると思ってたのに、消えないでよ。一生隣にいてくれると信じてたのに。みどりかわ、みどりかわ、俺の声を聞いてよ。

あの時、必死で、聞こえてるよヒロトと叫んだ。
真っ暗で、上も下も分からなかったけどただただヒロトと叫んだ。
声は、虚しく反響するだけだった。

いつかヒロトが言ってた。

「知ってる?緑川。今夜空にある星の光は何億光年も前のものなんだ。こうして俺らが見ている星も、既になくなってるかも知れないね。」

ああ、星になった俺の声は、いつあなたに届きますか。

「いつまでも愛してる。ずっとずっとここで待ってる。だから、ヒロトはヒロトらしく生きて、最後まで生き続けて。」

この声は、あなたが決定的なことをしてしまう前に間に合いますか。
あなたをつなぎとめるひかりになりたいのに。
あなたをこちらへ呼び込みたくはないのに。

上ばかり見上げてないで、前を向いて、周りにいる人たちに気付けよ、バカ。

小さく呟けば、勝手に目から涙が零れおちた。


星の声はまだ、届かない


星のひかり 
(届かないこえ)       


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