「ヒロトの首って白くて美味しそうだよね。」

始まりはそんなリュウジの一言だった。

「・・・どうしたのいきなり。」

怪訝な顔をして本から顔をあげたヒロトが尋ねる。
二人は今まさに寝ようとベッドに入ったところだった。部屋の電気は消され、ベッドサイドのライトの柔らかいオレンジの光だけがヒロトの手元を照らしていた。ヒロトの隣で枕に顔をうずめていたリュウジは眠たげにごろりと寝返りを打って、ヒロトの顔を見つめた。

「いやぁなんか白くてアイスみたいだなぁって。」

視線がふわふわと揺れ動くところを見ると、眠りかけているらしい。口調も若干幼くなっている。

「いいなぁ美味しそうだなぁ。・・・食べたいなぁ・・・」

ふふふと一人で笑いながら夢見るようなリュウジに、むくむくと悪戯心が沸いてきたヒロトは本を閉じて、

「じゃあ、食べてみる?」

とパジャマのボタンを一つあけて笑った。

冗談のつもりだったのに。

なんでこんな状況になったのか、とヒロトはため息をついた。
ちら、と視線を下げればリュウジのつむじがよく見える。うっとりとしながらリュウジがヒロトの首に顔を寄せている。ぺろり、と冷たい舌で肌を舐めとられる感覚にぞわりと肌が粟立つ。つぅっと首のラインにそって舐めあげられる。ヒロトの白い肌の上に、赤い舌がちらちらと銀の糸をひいてゆく。一心不乱に舌を這わせる様子は別の行為を連想させて、ヒロトはくらりと眩暈がした。
リュウジの口が、かぷり、とヒロトの喉仏へ噛みつく。そのままほんの少しだけ顎に力を込める。

「−ッ。」

ぴり、と弱い痛みが肌の上を走りヒロトは思わず声を漏らした。
唾液にまみれててらてらとひかるヒロトの喉仏の上には赤く歯の跡が残っていて、満足そうにリュウジはそこへキスをした。

「リュウ、ジ、もう、」

声が上がったヒロトのやんわりとした制止の声を無視して、リュウジはヒロトの首筋へ無数のキスの嵐をおとした。
いくつ目かわからないキスマークをつけたところで、ヒロトの手が薄暗い所からのびてリュウジの顎を捉えた。そのまま上へ顎を持ち上げて目を合わせる。ヒロトが眼鏡を外してベッドサイドへ放った。

「次は俺の番だよ、リュウジ」

そのまま後ろへとリュウジを押し倒して健康的な肌に赤い華を散らしていく。首と言わず、肩にも、腕にも。赤い唇から漏れる熱い吐息にリュウジはびくりと体を震わせた。

「あっ、あ、ヒロト、ヒ、ロト、」

細い腕をヒロトの首にまわして、リュウジは切なげにヒロトの名前を呼ぶ。
物欲しそうな目、誘うように開かれた唇、所有印を刻みつけられた肌。すべてがヒロトの理性を崩してゆく。半開きの唇に唇を重ねれば途端に絡みつき濃厚なキスへと変わっていく。

「っ、もしかして全部計算、だった?」

深くむさぼるようなキスの合間に尋ねてみれば、リュウジは妖艶に笑った。



XXX
(首へのキスは欲望の証)


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