39!!
いつもお世話になっている君へ、せめて言葉で伝えたいんだ。
「ありがとう」って。
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「ヒロト、いつもありがとう」
振り返るとそこにはやけにニコニコした緑川がいた。
「どうしたの、いきなり・・・。やけにご機嫌じゃない?緑川」
やっぱり緑川には笑顔が似合う、かわいいなぁ、なんて思いながらヒロトも微笑み返した。それにしても、いきなりお礼を言われるなんて何か自分はしただろうか。
「ふふっ、今日は何の日でしょう?」
「え?あれ、何か記念日だっけ?」
そういうイベント事にはいつもはヒロトの方が敏感で、何かあるごとに緑川にプレゼントしたりデートしたりしている。緑川はむしろそういうものには頓着しないほうなのだ。そんな緑川が言うほどなのだから何か大きなことだろう、そう思ってヒロトは懸命に記憶を探った。
(えーっと、付き合いだした日ではないし、初キス記念でもないよな・・・初デート?いや、それはこないだお祝いしたばかりだし)
黙り込んだヒロトを見てそれはそれは楽しそうな緑川。いつもとは違う立場を楽しんでいるようだ。ヒロトからしてみれば悔しいことこの上ない。
「気付かないの?ヒロト」
ニヤニヤ悪戯っぽく笑う緑川の可愛さにクラリときながら、ヒロトは首を横に振った。
「仕方ないなー、じゃあヒント!!日付を考えてください!」
「日付・・・?」
今日は、確か、
「・・・ああ。なんだそういうことか」
3月9日。つなげてみれば”サンキュー”の日。
この語呂合わせにかこつけて、身近な人に感謝を伝える日だということを、ヒロトは緑川から聞いた。
気づけばなんということはない。しかし、なぜ鈍感な緑川が気付いたのか。
尋ねると笑ってこう言われた。
「円堂から聞いたんだよ!なんかテレビで言ってたんだって」
それで俺もいきなり「ありがとう」なんて言われたからびっくりしてさ、聞いたらそういうことだったんだよね。もう、一種のドッキリだよねこれ。
楽しそうに話す緑川。その笑顔は昔から変わらないもので、エイリア石の時には見れなかったもの。君が見せてくれなくて、俺も見ようとしていなかった。その笑顔をまた見れて良かった。その笑顔が立ちあがってまた歩き出す力になった。
ヒロトはそこまで考えてゆっくり笑った。そして
「お礼を言うのはこっちの方だよ。」
そう呟いて緑川を抱きしめた。
「いつもありがとう。俺こそ緑川に感謝してる。一緒にいてくれてありがとう。笑顔をみせてくれてありがとう。俺を好きでいてくれてありがとう。他にもたくさん言いたいことはある。けどね、一言でまとめるとつまりは、生まれてきてくれてありがとう。」
背中にまわされた手がいっそう強くヒロトの服を握りしめた。顔が見えなくてもヒロトには緑川が顔が赤くなっていることは分かった。
「いきなりなんなんだよ・・・っ。それは、卑怯だよ。」
「折角だから言っておきたかったんだ。」
「俺が言いたかったこと、全部言うなよっ。言うことなくなっただろ・・・」
ヒロトの肩に顔をぐりぐりとおしつける緑川。その頭をヒロトはゆっくりなでた。
「あのな、ヒロト」
「うん。」
「俺だって今までヒロトに助けられてきたんだ。楽しい時も辛い時もそばにいてくれたろ。それが支えてくれたんだ。だから、ヒロトが生まれてきてくれて嬉しい。生まれてきてくれてありがとう、って先に言うつもりだったんだよ。」
先越されちゃったよ、もう。
驚くほど考えていることが同じだったことが嬉しくて、照れくさくて、ヒロトは抱きしめている腕に一いっそうの力を込めた。
39!!
(生まれてきてくれて、僕と出会ってくれてありがとう)
39の日記念フリー文になります!こんなサイトに来てくださる方々に愛と感謝をこめて捧げます!お持ち帰りご自由にどうぞ。一言言ってくださると管理人が泣いて喜びます!
3月9日 「頭がぱーん」管理人:オカ
追記:フリー配布期間終了しました。
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