小さな誠 | ナノ

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 新しく召喚されたサーヴァントは、新撰組三番隊隊長の斎藤一。
 彼の召喚に成功したマスターはご機嫌で新しいサーヴァントが来た時のお決まりになっているため、早速とばかりにマイルームへと案内する。しかし、マスターはそこにとんしょがあることを忘れていた。

 何故なら、マスターにとって、マイルームにとんしょがあることは当然になっており、それは勿論とんしょがあるところに控えている新撰組副長・土方歳三の種から生まれた小さな…五センチサイズの土方ちびさんがいるのも同じこと。そして、それを見た新入りがどうなるかなんて、マイルームに土方ちびさんが居ることが当然になっているマスターには予想もつかないことだった。

「はじめちゃん!ここがマイルーム!何か用事がある時は何時でも遠慮なく来てね!」
「いやいや、マスターちゃん…そんな気軽に呼ぶもんじゃ…ん?あの端っこの方にあるプランターは?」
「あぁ…とんしょだよ」
「……はい?」
「え?だから、とんしょ。土方ちびさん今の時間ならとんしょに居るはず…おーい、土方ちびさん!」
「え、え、待って!マスターちゃん待って!何!?屯所!?副長のちびさんって何!?」
「なんだ、マスター。くだらないことでは呼ぶなと何時も言って…なんだ、斎藤じゃないか」

 とんしょから出てきた土方ちびさんを見て固まる斎藤。そんな彼の様子に気付かずマスターと土方ちびさんは話を進める。

「案内してたんだよ〜それにはじめちゃんは新撰組でしょ?なら副長には真っ先に挨拶しなきゃじゃん。大きい方には先に済ませてるから」
「あぁなるほどな。改めて新撰組として恥じない働きを見せろよ、斎藤」

 ナチュラルに進む会話に思考も身体も停止していた斎藤が再起動する。

「いやいやいやいやいや!!ちょっと待ってくださいよ!え?どういうことですか?なんで小さい副長がここに?」
「決まっているだろ、護衛の仕事だ。ここは人類最後のマスター、つまり最重要人物の部屋だぞ。うちの仕事だろうが」
「いやでも新撰組はとっくに…いや、こんなことはあんたに言っても無駄でしたわ」
「そのうちきっとはじめちゃんの種も見付かるかもですよ〜どっちで来るかな?楽しみだよね!」
「ふん…隊服の方に決まってるだろ」
「え。もしかしてこれがここでは常識な感じで?」
「そうだけど?」
「……そっかぁ…!」

 人工的な明かりが眩しい天井を見上げて、目元を手で抑えながら力なく呟く斎藤。
その様子を見ているはずなのに土方ちびさんは早速とばかりに「おい、何を呆けている。お前の見廻り箇所を説明するぞ」と声を掛ける。その声に反射的に「はい、副長」と返事をしてから、また自分の頭を抱えて蹲る斎藤を無視して土方ちびさんはその身体には大きすぎる見取り図を取り出して、丁度いいとばかりに蹲った斎藤の目の前に広げた。

「お前の担当箇所はここからここまで、時間帯は朝昼晩、そして深夜帯だ。要注意人物も伝えておく。しっかり覚えろ」

 その平素と変わらない、というよりも大きな方の土方と変わらない様子に毒気を抜かれたのだろう。一つ大きな溜め息を吐くと「はいはい、分かりましたよっと」と答えて真剣に見取り図と要注意人物の写真を眺め始める斎藤。

 形も時代も違えども、それはあの頃と変わらない様子だったことは、本人たちにしか知り得ないことだった。

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