小さな誠 | ナノ

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 とんしょの隅。土方ちびさんが廊下で発見した小さな丸い物を植えた場所から生えた双葉は、見廻りから戻ってくる頃には蕾を付けていた。それを確認した土方ちびさんは満足気に頷くと、ジョウロなんか持っていなかったために茶碗で水やりを済ませる。これで明日には見知った男が出てくるだろう。急いで服を用意してやらなくては行けない。

 土方ちびさんは、ちびノッブのせいで慣れた作業を神業の様なスピードで熟しながら、新しい隊員の誕生を今か今かと待ちわびる。召喚された方は洋装だったが、やはりここは馴染んだ隊服が良い。そう判断して。

 翌朝。土方ちびさんが朝の鍛錬のためにとんしょの訓練場へ行くと、そこには見慣れた後ろ姿。感動の再開にならないのは、片方が全裸だからだろうか。そんなことは土方ちびさんにとっては些事なので声を掛ける。

「遅かったな、斎藤」
「あぁ、副長。俺がこの髪型ってことは懐かしい服を着なきゃいけないってことですかねぇ」
「もう用意してある、早く着替えてこい。鍛錬のあとは見廻りがあるぞ」
「はいはい、人使いの荒いこって」

 そう言いながらもいそいそととんしょ内で着替えを済ませて戻ってくると、ちびはじめちゃんは土方ちびさんと一緒に鍛錬を済ませる。そして道案内と見廻りに重要な箇所を聞きながら土方ちびさんのいつもの見廻りコースを確認すると、ふと思ったことを口にした。

「そういえば、この隊服。誰が準備したんで?やけに馴染むけど」
「あぁ俺だ。ちょっと色々あって慣れてるんでな」

 少し遠い目をする土方ちびさんに色々と悟ったちびはじめちゃんは、懸命にも「…まあそういうこともありますよね」とだけで返事を済ませる。その日からとんしょに住人が一人増えた。同時に新撰組隊員も。

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