短編 | ナノ

Novel
Short Story

懐かない猫

 無自覚ってのは厄介なもんだ。遠慮がちにそっと凭れ掛かってくる自分より二回りは小さい身体に、零れかけた溜息を抑えながらそんなことを考える。今ここで俺が溜息なんて吐けばこの後輩は二度と甘えては来ない。まだ少し緊張して肩に力の入ったその不器用な甘え方が、ようやく懐いた野良猫のようで何だかむず痒く思うが存外悪い気はしなかった。



懐き始めた猫

 最近は遠慮がなくなってきたのか、初めの頃に比べて随分とリラックスした様子でそっと凭れかかってくるようになった。緊張して不必要に力が入っていた肩は程よくして弛緩し、少しずつこの後輩にとって自分の側が安心する場所になっている事実にくすぐったくも喜ばしい。もっともっと頼れと思いながら、その心地よい時間を堪能した。



野良猫は家に懐く

 生意気な後輩はやっと甘えることを覚えたのか、今では遠慮なく全体重で凭れかかって来るようになった。頭だけそっと肩に乗せていた頃の殊勝さは鳴りを潜め、ふてぶてしく人を背凭れに眠りこけたりする。胡座をかけば当たり前のようにそこに収まるようになった後輩に思わず笑いそうになって奥歯を噛み締めた。


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テーマ「人外ファンタジー」
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