短編 | ナノ

Novel
Short Story

 その日のお昼、フォウくんは日課となっているマーリンの足首を噛もうと隙を伺っていた。

最近はマーリンも学んだのか、なかなか隙がない。もちろん、その程度の抵抗で諦めるフォウくんではない為、自ずと攻防は激しくなり軽く名物化してきていた。

 椅子の陰からマーリンを睨んでいたフォウくんを、誰かが後ろからすくい上げるようにそっと持ち上げる。
ふんわりと香る爽やかな果物のような香りに、その手の持ち主を悟ったフォウくんは剥き出しにしていた牙をしまった。

「これ、汝の気持ちはも分からんではないが…あまり不用意に牙を剥くものじゃないぞ」

 呆れたような声音でラーマが言う。
それに対し、フォウくんは自分の行為の正当性を訴える。

「フォウフォウ!フォーゥフォフォウ!!」

 熱弁のあまり、ラーマの手のひらをぺちぺちと叩きながら如何にマーリンが悪い奴なのかを訴えるフォウくん。
言葉は分からないが、何やら一生懸麺な小動物相手にうんうん頷いて話を聞くラーマ。

その場に癒やしの空間が出来上がっていた。

 そこへ、諸悪の根源であるマーリンがのんきに声をかけてくる。

「やあ、何をしているんだい?」

 その途端、目にも留まらぬスピードでマーリンに飛びかかるフォウくん。ラーマの手のひらから素晴らしい跳躍力を発揮し、マーリンの鼻筋に噛み付く。

その見事な跳躍に、思わず感嘆の声を漏らすラーマ。マーリンを噛むというルーチンを済ませたフォウくんは満足気にふんすっと鼻で息をすると、華麗にラーマの肩に着地する。
その見事な手際に、ラーマも思わず痛みに蹲るマーリンを無視してフォウくんに賞賛の拍手を送る。

「凄いな、見事な手際だ」
「フォーウ!」
「迷いのない動きに、的確に急所を狙っての一撃…素晴らしい動きだった」
「フォウ」
最初は止めていたはずのラーマは、すっかりそのことを忘れて肩に乗ったフォウくんを褒めながら調理担当者から昼食を受け取る為に移動する。

「……私の心配は…?」

 後には、なんだか心まで痛くなってきた気がしているマーリンが残されていた。
ラーマくんとフォウくんの話 おしまい。


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