短編 | ナノ

Novel
Short Story

 バレンタインはいつもお世話になっているお礼だからと、シャンクスはホワイトデーにお返しを貰おうとしない。だが、副船長とはいえ一船員が船長から貰いっ放しなんてのはどうにも座りが悪い。それに、感謝ならベックマンだってしているのだ。彼が誘ってくれなかったらきっとこんなに楽しい冒険になんて出ていなかった。だから、シャンクスにバレない様に、いつもより甘やかしているのだ。

 とは言ってもいつもかなり甘々な対応をしている自覚があるベックマンである。どうやって甘やかすかは毎年の悩みだ。その悩みすらも煩わしくないのが、自分でも珍しくて楽しい。こんな感情は抱いた事がなかった。いつだって後腐れのない商売女と遊んで、流されるままに生きてきたのだ。あの鮮烈な赤に出会うまでは。

 まあ毎年船員たちにからかわれるシャンクスを見るのは楽しい。だからそれを見ながら二人旅だった時からシャンクスがよく強請っていた料理を作る。実は味付けが下手くそだから他の誰にも食べさせた事がないものだ。これだけは、お頭であるシャンクスの特権。完璧そうに見える男の唯一の弱点を知りそれを味わえる特権なのだ。


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