短編 | ナノ

Novel
Short Story

 毎年、サボの誕生日に気を取られていてスルーしてたり軽く済ませてたことが多かったけど…流石に恋人になった年にホワイトデーかつ誕生日なのを無視するのは良くないってことくらい俺でも分かる。でもそれに気付いたのが前日って直前過ぎねぇか?マジでちょっと自分に呆れちまったぜ。頼りのサボも直前過ぎるって匙を投げて来たし、別にスモーカーはこのくらいで怒ったり呆れるやつじゃないって分かってても俺がちゃんとお祝いして貰って嬉しかったからその分をお返ししたかった…。あとバレンタインのがあまりにも釣り合いが取れてなかったからここで何とか挽回したかったってのもある。

 しかし恋人同士の贈り物なんてしたことがない。前回の反省を活かして、今回はホワイトデーの特設会場まで来てみたが、あまりにも種類が豊富過ぎる。スモーカーはあまり甘いのは得意じゃないし…そういやクラスの女子が渡すお菓子で意味が変わるとかも言ってたし…。一度会場から離れて、スマホでポチポチと送るお菓子の意味なんかを調べてみる。パッと調べたところマシュマロとクッキーはダメだ。自分の感情に素直になるとしたら、キャラメルかバウムクーヘンだけど…合わせたら意味も二倍になったりするのだろうか…。エースはうーんと腕を組んで考え込む。

 多分と言うか絶対、スモーカーは何を渡しても喜んでくれる。だってバレンタインに渡した溶けかけた小さなチョコ一粒であんなに喜んでくれたのだ。彼からの愛を疑う訳じゃない。けれど、エースだって男だ。ちゃんと恋人を喜ばせてみたかった。お菓子に拘らなければ、いつでも使って貰える様にライターでも良いかもしれないし…でもまだ学生のエースじゃあまり高いものは買えない。エースはホワイトデー特設会場を離れて雑貨が売っているコーナーへと移動する。携帯灰皿なら高くなくてもお洒落な物が売っているのを見かけたからだ。

 取り敢えず何件かハシゴして納得の行く物を買えたエースは次にどうやって渡すかという問題に直面していた。前みたいにムードも何もないのは流石に不味いよな…と考えるが、恋愛初心者にムード作りなんて無理。どうしようか頭を抱えていた時、サボが長めのリボンを持ってやって来た。

「悩んでいるな青少年!」
「何だよ、お前同い年だろ」
「そんなエースに朗報だ、俺とルフィも貰ったからな。連盟でお返しを準備することになったんだ。ちょっと良いか?」

 そう言いながらサボは手早くエースの頭に手に持っていたリボンを結ぶ。そしてよく分かっていないエースの手を引くと丁度帰って来てたスモーカーの前に差し出した。

「はい、スモーカー!これ俺とルフィからのバレンタインのお礼!」
「は!?」
「じゃあ後は二人でごゆっくり〜」

 そう言うとサボはさっさと引っ込んでしまい、その場には今更頭にリボンを巻かれた理由を察して真っ赤になるエースに、突然のことに固まることしか出来ないスモーカーが残される。スモーカーがどうしたものかと迷っていたら何やら覚悟を決めた顔をしたエースが手招きして来る。それに素直に屈んでやると、えい!とばかりに鼻先へとキスされて「はい!これプレゼント!」と胸元に包装が少しよれたプレゼントを押し付けられる。

「あ、ありがとうな。開けて良いか?」
「ん!」
「携帯灰皿か…これから毎日使うな」
「ん、気に入ってくれて良かった」

 そう笑うエースは可愛くてスモーカーは忍耐力を試された気分になった。恋人からのプレゼントはそれはもう嬉しかったが、サボの悪巫山戯には後から報復をしようと考える。でも今は照れながらも勇気を出して自分からキスをして、プレゼントを渡してくれた恋人を甘やかすことにした。


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