植えられた推し | ナノ

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○月△日(曇り時々雨)
今日は美しいルビーのような種を二つ見付けた。最初は宝石だと思って鑑定して貰ったが、どうやら植物の種らしい。一体どんな植物が生えるのだろうか。ル ビーのように美しい花が咲く気がする。とても楽しみだ。同じ場所で見付けたので分けるのは可愛そうだと思い同じ鉢へ植えた。

○月□日(晴れ)
種を植えてから5日程経った。鮮やかな金色の可愛らしい双葉が二つ、芽吹いた。植物の芽といえば緑という先入観があったので驚いたが、風に揺れる双葉は陽の光を浴びて美しく輝いていて、そういう些事はどうでも良くなった。成長が楽しみだ。

○月◇日(雨)
昨日までは少しずつ成長していた二つの双葉が一気に育ち、なんだか人の頭部に見えるほど細かい葉?を生やし、一つは種と同じ形の飾りのようなものが付いていた。どう成長するのだろうか。ワクワクしてきた。

○月○日(曇時々晴れ)
今朝はどうなっているだろうかと、ワクワクしながら鉢植えの側へ行くと、愛らしい人形のような小さなが顔が二つ生えてきていて、ぱちりと目があう。その色は種と同じくルビーのように美しい真紅で、一人はまだ少年と言える年頃に見え、もう一人はふてぶてしく睨んでくる。ジッと見上げてくる幼い方の第一声が「ぼくらをうえるにしてははちうえがじみですね!」だったことには少し笑ってしまった。どうやら既に育ちきっているらしい、鉢植えから出てきた二人は何処からか服を手に入れてきたらしく身なりを整えていた。余談だが、その日は二人の美形の御眼鏡に適う鉢を探すのに苦労した。

△月○日(小雨)
無事になんだか綺麗な装飾が施されている鉢を購入し、元々二人を植えていた鉢から土を移し替えて引っ越しが済んだ。聞くと二人は植物でもあり生き物でもある、人間が認知し得ない高貴な生き物らしい。難しくてよく分からなかったが、毎日美味しいご飯があれば死なないらしいので、一人一個食べられるサイズのものを探して与えるようにした。人の物の一部だとプライドが傷つくらしい。誇り高い生き物だ。

△月◇日(雷雨)
夜に鉢がちょっとガタついていた。雷に驚いたのだろうか。まああの二人は仲睦まじいし、小さな生き物には過干渉は良くないと聞くので、お互いで慰めあえるだろうと放っておいた。

△月△日(晴れ)
子ギルと名乗る方が食べる量が増えた。術ギルと名乗る方も、今まではしようともしなかったのに自分の分の食料を分け与えるようになった。なんだろう、仲良し度が上がったのだろうか。

△月×日(曇)
よく見ると子ギルの方のお腹が膨れている。ていうか針で突いたら破裂しそうなほどパンパンになっている。これってもしかして?と思って術ギルの方に聞くと思った通り妊娠らしい。何か出来ることは?と聞くと清潔なハンカチを要求された。

◇月○日(晴れ)
夜、鉢植えの中から産声が聞こえた。どうやらあのパートナーの間に無事子どもが生まれたらしい。出産祝いを用意しなきゃと、夜でも開いている大きなスーパーへ向かい出産祝いの品を見繕う。ついでに体力を消耗しているであろう子ギルの好物を買い込んでおいた。

◇月×日(曇り)
二人が自分たちの子どもを抱いて挨拶に来てくれた。抱っこさせてもらったが、人差し指の第一関節ほどしかない小さな小さな命はそれでも暖かくてなんだか感動した。術ギルから今後注意すべきことなどを教えて貰いながら、二人の子育てを手伝っていこうと思う。孫が出来た気分で何だかちょっと浮かれている自分を自覚した。

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