「ニア」
背後で確かに自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。その声が自分の中に入ってきて誰だか頭が理解する前に、体が先に反応する。思わずパズルのピースをはめる手が震えてしまって、あぁ、体は正直だ。
「久しぶりだねー」
少しおどけた感じでそう言った彼女は、ぺたりと自分の前に座って笑った。笑顔はあの日とちっとも変わっていない。
「相変わらずですね」
「ひどい!私だって少しは大人っぽくなったって言われるし、ニアだって…すっごく変わったよ」
びっくりした、と彼女はまた笑ったけれど先程の笑顔とは少し違っていた。ほんの一瞬だけの悲しそうな顔。
わかっている、彼女は変わった。子供っぽさが少し抜けて綺麗になった。本当に驚いたのは自分の方だ。それでもやっぱり根本的なところは変わっていないと感じる、のはただの私の願望だろうか。
「探したんだよ」
しばらくたってからポツリと小さい声で囁いた。
あの日の事を言っているのだと察する。キラを捕まえる為に誰にも告げずハウスを出た、彼女にも。と言うより彼女とは時々向こうから喋りかけてくるくらいだったし、何より自分と違って明るくて人気者。まるで正反対。
だけど大切だった。
言葉を引っ掻き回してみても見つからない感情。Lをも倒した殺人鬼にだけはどうしても渡したくはなかったのだ。
「こんな所に居たんだね」
自分は彼女を守った気になっていただけだ。
「ずっと会いたかったよ」
私だってずっと。
「寂しかった」
いや、本当に自分が守りたかったのは何だ。
「黙って置いて行かないで」
その手をとることは、まだ許されるのか。
大した正義感
(傷つけたくないと、正しい振りをして逃げていた)(本当は自分が傷つくのが怖くて)