アンケート小説 | ナノ

さようなら、私の思い描いていた素敵エンジョイスクールライフ。きらきらと輝く桃色青春スクールライフ。高校に入った最初の席替えで、私はヤンキーの隣になりました。



隣の席はヤンキー次屋くん


なんだよう…今日もちゃんと出席してるのかよヤンキー!もはやヤンキーじゃないじゃん!優等生じゃん!と、心の中で思いっ切り悪態をつきながらも、決して表情にはお首にも出さず、通学鞄で顔を隠しながらこそこそとヤンキーの隣の席に着席する。余計な音はたてない。私は空気…私は空気…と念仏のように心の中で繰り返す。

今思えば私の不幸の元凶は全てあの日から始まった。高校に入って初めての席替えで、私の席は一番後ろの端になったのだ。
学級委員が黒板に、座席と名前を次々チョークで書いていく。なんていったって、この席が華の高校生活の始めの席になる。それはもう皆も、お目目をギラつかせて自分の周りの席の子を確認していた。
私ももちろんすぐに自分の周りの席を確認する。なになに…一番後ろの端っこなんて超ラッキー!ふんふん、前の席は富松か…。友達とは離れちゃったなぁ。で、お隣さんは……

「げっ!!!」

思わず叫んだ。次屋…。次屋ってあの、いかにもヤンキーの次屋くん?前髪だけ染めてるヤンキーの次屋くん?「教室がわからなくて遅れました」なんて大胆な嘘をついていつも堂々と遅刻してくる次屋くんなの…!?

こうして私の夢見ていたスクールライフは儚く砕け散ったのである。そしてヤンキーだから学校には来ないだろうと思っていた私の浅はかな考えも打ち砕かれた。席替えをしてから、次屋くんは毎日学校に着ている。ヤンキーのくせに、だ。




「はい〜、それじゃあ教科書の34ページ開いて〜」

はぁ、はやく席替えしないかなぁ。いくら一番後ろの端っこの席っていうベストポジションでもねぇ…これじゃあ緊張してお昼寝も出来やしない、ってあれ…?ない、ない!教科書がないッ!?まさか忘れた?


「じゃあ〜名字読んで」
「えっ…!!!」

先生…!なんでこんな時に限って、私を指名するんですか…!ヤバいヤバいどうしよう、これはひとまず先生に謝って……ん?

ガタガタと、隣から音が聞こえてぐるんと首を右に捻ると、ヤンキーもとい次屋くんが、私と自分の机をくっつけようと奮闘していた…なんで?


「はい」

そして机と机の真ん中に、教科書を立てる。次屋くんが教科書の右側だけを持っているから、ぐにゃっと曲がりそうになって慌てて左側を持つ。これは、教科書を見せてくれるっていうことなのかな…?

「あ、ありがとう」
「うん。別にいいよ」

「名字〜はやく読んで〜!」
「あ、はいっ!えっと…徒然なるままに日暮し、硯にむかいて…」


二人でひとつの教科書を持って、覗き込んでいるから顔が近い。私と次屋くんの肘は、少しでも動いたら触れてしまいそうだ。次屋くんって…ヤンキーじゃないのかな?教科書を読みながらも、ぐるぐると余計なことばかり考えてしまう。

「はい、次富松読んで〜」

読み終えてふぅ、と息を吐き出す。ちらりと次屋くんを見ると、なんと目が合ってしまった。

「あの、教科書本当にありがとう、ございました」
「おう。何で敬語?」

ははっ、と次屋くんの笑った顔にドキリとした。直感で思った。例え次屋くんがヤンキーだったとしても絶対にいいヤンキーだ。
とりあえず次の休み時間は、幼なじみの富松から、次屋くんについて色々とリサーチをしなければ!とこっそり意気込んだ。





110213

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