受験が終わってから、私は結果を静かに待ちながら残った仕事に取りかかっていた。もし受かって学園に入るとすればその間は寮に縛りつけになってしまうので仕事は入れられない。活動休止である。今出来る範囲で私という偶像を発信せねば風化してしまう。流行と同じものだ。
悲しいけど永遠なんて私にはない。
手を振る。笑う。短いふんわりとしたスカートの裾が広がる。全部一瞬のことだ。
今の私の歌にも未来永劫大事にされていく意味なんて込もっていない。時代にあった大きな網をばさりと広げて大衆の耳を一時的に繋ぎ止める陳腐な単語とメロディラインの連続。
老いてしまったら後はない。
雪の季節も終わって暖かい春がそっとやってきた頃、いつも通りに仕事を終わらせた後社長が直々にやってきてにやにやしながら私に封筒を手渡してきた。
早乙女学園からである。
中を開けて薄い紙を引っ張り出す。Aクラスに合格したという旨がそこには書いてあり、私はにやにやとしたままの社長の顔をじっと見つめた。
これでお別れかもしれない。まだわからないが。
暫く見つめあった後、埒が開かないので私から話を切り出した。
「・・・私落ちるつもりないから」
「そうかね」
「前にも言った通り私はここに愛着はないし、私が目指してるのはもっと上」
「知ってるとも」
「そう」
「うん」
「じゃあ暫くの間さようなら」
「頑張って」
「言われなくとも」
何となく振り向いたら社長はぱたぱたと手を振っている。それを見なかったことにして私は家まで歩きだした。
新しい生活まであともうちょっとだ。