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眠い眠い…
( 2010/09/23 20:13
)

眠い&テンション低い中で考えた臨仔静文…

中々シズちゃんが可哀想な話なんですよ。実は。
















「臨也、手離しちゃ駄目だかんな!
お前すぐ迷子になるんだから」
「うんシズちゃん」



ぎゅっと握った手を握り返してくる自分より大きな手に静雄は少し恥しそうに笑うと、臨也の手を引き街を歩き出した。
大の大人が小学生の子供に手を引かれ歩いている。そんな少し不思議な光景も“今”の静雄と臨也にとっては何ら不思議の無い状態だった。



「インプリンティングってやつかな?」
「いんぷりんてぃんぐ?」



ベッドの上で静雄を抱き締めたまま不安そうに自分を見上げる臨也を見て新羅はそう言った。聞きなれない言葉に新羅の言葉をおうむ返しして首を傾げる。


「うん。刷り込みってやつでね。孵化した鳥の雛が一番初めに目に入ったモノを親だって思い込む現象の事だよ。
今の臨也は生まれたての子供みたいなものだからねぇ…」





臨也が頭部を負傷した。その知らせを聞いて静雄は臨也の助手である波江に新羅の家まで送ってもらい、臨也が目覚めるまで側に居た。
一晩中臨也の側で起きていて流石にうつらうつらして来た頃、ブラインドの隙間から入る朝日に臨也の白い瞼がピクリと動き血の色に似た赤い瞳が覗いた。

「臨…也…?」
「シズ…ちゃん?」
「!」


恐る恐る控え目に静雄が声を掛けると、顔だけ動かした臨也は臨也だけが呼ぶ呼び方で静雄を呼んだ。けれど、それだけだった。


「頭怪我して記憶喪失ーはそんなに珍しい事でも無いけれど、
自分の事じゃなく、子供の名前だけ覚えて後は何もかも忘れるなんて…器用な事するなぁ」


はははと笑う新羅が言うとおり、臨也は静雄の名前以外一切覚えていなかった。自分の名前だとか自分が何者だとか。それどころか日常生活すら一人ではまともに出来ないらしく、正に生まれたての子供の様だった。



「あら。
本当に厄介な男ね…そんなだから誰かに呪われでもしてるんじゃないかしら。
どちらにせよその様子だと休業せざるを得ないわね」


何とか新宿の臨也の自宅兼事務所に戻り波江に報告すると、特に驚くでもなくサラリと毒を吐く。
情報屋という特殊な職業に就いている臨也。それも結構売れっ子だったりするのだが、幸いにも今手持ちの件は臨也しか対処できないところは終わっており、調査報告を作成する段階のものばかりだったのでそちらは波江が対処してくれるとのことだった。


「あの、ありがとう波江さん」
「良いのよ、ソイツが元に戻ったら割り増しで給料ふんだくってやるから。
貴方は余計な心配しないでソイツの面倒でも見てなさい」


実際、臨也の仕事の心配をした処で子供でしかない静雄には何も出来ない。
それでも何処かぎこちなく頭を撫でてくる波江にもう一度「ありがとう」と言った。








「はい臨也。あーん」
「あー」


何もかも忘れた臨也は食事だって一人で出来ない。
新羅の家から連れ帰って最初に食事をした時に箸は勿論の事フォークやスプーンさえまともに握れず口周りからテーブルからボロボロとこぼしまくったのでそれからは静雄が寄り添いスプーンで臨也の口まで食事を運ぶ。


「ん、おいしー」


幼いながらに自炊の出来る静雄が作った食事をもくもくと咀嚼しながら嬉しそうに臨也が笑う。
「おいしい」そう言われて静雄も微笑む。
食事が終わった後は風呂の世話もする。
やっぱり初日に自分では何も出来なかったし、シャンプーが目に入って大泣きしたのでシャンプーハットをかぶせてやわしゃわしゃと優しく頭を洗ってやる。




「こら臨也っ!ちゃんと髪乾かさないと風邪ひくぞっ!!」


ちゃんと湯船で100まで一緒に数えて出た後はパジャマも着せて、髪も乾かして、歯も磨いたら一緒にベッドに入る。
こうなってからというもの、静雄は一人で寝れないらしい臨也の抱き枕状態になっている。



「おやすみなさいシズちゃん」
「おやすみ臨也」


けれど、きゅうっ抱き締められる少しだけ息苦しく感じるソレが特別苦痛とは思えなかった。むしろ温かな温もりに包まれることで良く寝れるぐらいだった。

一足先に眠りに落ちた―けれど腕の力は弱めない臨也の穏やかな寝顔を見ながらこっそり静雄は思ってしまう。



「(このまま…―臨也が記憶を           のに…)」



何時の間にか眠りに落ちていた静雄が見た夢は自分を見下ろす無機質な、冷たい赤の双眸。
冷たい言葉。
触れる事の出来ない手。






「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「シズ…ちゃん?」


恐怖で飛び起きた静雄はずっと「ごめんなさい」と繰り返す。それに気付いた臨也も起き上がり不思議そうに顔を覗き込んで本能からか慰めるようにぎゅっと静雄の体を抱きしめてくれるが、それでも静雄は泣き付かれて気絶するように眠るまで「ごめんなさい」を繰り返した。















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