南海太郎朝尊と一緒に帰る
「足元がふらついているね。久々の外出で疲れが出たのかな」
報告任務の帰り道のことだった。重い足を引きずるように歩いていると、少し先を歩いていた南海先生がくるりと踵を返し、私の前で立ち止まった。
「僕が君の手を引こう。それとも、少し休憩するかね」
「…早く帰りたい」
「承知したよ」
南海先生の手が私のくたびれた手を掴む。驚いた。先生の掌は、囲炉裏のように温かい。人間ではない先生より、人間として生まれた私の方がずっとずっと冷たいではないか。いや、私は人間なのだろうか。まるで寒空の下に打ち捨てられた錆びた鉄の塊みたい。
南海先生の角張った指が私の悴んだ指先にするりと絡んでくる。先生は私の指先を優しく包み「おや、主は温かいね」と笑った。先生の眼鏡には、後ろに広がる夕焼けと同じくらい顔を赤くした私の姿が映り込んでいた。
2021.7.30
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