memo
- ナノ -


2023/04/25

もう勘弁してくれファルス。こっちはティーチャー・クラウスだけでいっぱいいっぱいなんだよ。

元々好きなキャラクターではあったのですが、『Eli, Eli, Lema Sabachthani?』を浴びた瞬間から、新約のファルスに情緒をかき乱されています。でもでもでもでも、あんなに愛らしい姿で「生きてくれ」「死なないでくれ」と懇願しながら実験台の少女たちを殺す悲しき不死者を目の当たりにしたら好きになってしまう。きらきらした瞳に宿る狂気に射抜かれてしまう。ファルスが創り上げた偽りの花園に未来永劫閉じ込められたいと願ってしまう!

無垢の皮を被ったファルスにめろめろになってますけど、初演よりも数倍凶悪になってて怯えました。物腰(と、頬)はもっちもちに柔らかいのに、言動が利己的という言葉に到底収まらないくらい恐ろしかった。舞台上のファルスですら充分に怖かったのに、BLOSSOMSを読んだらファルスの狂気がマシマシになり……なんでマリーゴールドをこんな目に遭わせるの!?

マリーゴールドといえば、初演よりも攻撃的な面が押し出されていて驚きました。ミュージカルのあのガーベラを経て、より繭期をこじらせちゃった感じがします。リリーとのやりとりを見ていたら胸が張り裂けそうになりました。他者との距離感が本当に全く分からないんだな…って。マリーゴールドは母親との共依存関係しか知らないんですよね。健全な友情を育もうにもダンピールという壁があるし、定期的にファルスに記憶を消されちゃうしで八方塞がりすぎる。ダンピールであること以外は全てがマリーゴールドの正反対のチェリーを見てると「なんでファルスはマリーゴールドをこんな目に遭わせるの……」という気持ちしか湧いてこないです。
そんなわけだから、マーガレットのイニシアチブを取ったときに彼女が言い放った白々しいセリフが本当に虚しかった。マリーゴールドのイニシアチブがマーガレットの精神にまで浸透していない可能性もありますが、あのセリフをマーガレットに言わせてたとしたら、それはファルスのウルごっこと同じじゃないか。

マーガレットと親衛隊が可愛かったな……。まごうことなきプリンセスだった……。マーガレットを面白がるファルスも可愛かった……。
・親衛隊の登場に目を丸くして驚くファルス
・『プリンセス・マーガレット』で楽しそうに体を揺らすファルス
・後方見守りメンバーの中で唯一積極的に拍手をするファルス
↑可愛すぎて脳みそが溶けました。

こんなに新曲があると思いませんでした。新曲の中だとマーガレットの『殺戮の宴』が優雅かつ物騒で好きです。

チェリーがリリーに写真を見せるシーンで、暗転したときの地響きのような音が鼓膜をぐわんぐわん揺らしてきて背筋がゾワゾワゾワーーーッ!!となりました。劇場の中であんなに嫌な音を聞いた経験が今までになかったです。音響ってすごいな……。

1度目の観劇から2度目まで数日あったので、その間に物販で買ったBLOSSOMSを読みました。現時点で私は『二輪咲き』を観たことがありません。なので巻末付録はひとまず置いておいて大阪公演の配信を待とうかなーと思ってたのですが、結局全部読んでしまいましたね。紫蘭のこと大好きになっちゃった……。あのカトレアが意外と冷静にローズのことを分析しててびっくり……。ファルスがラブレターを読まずに捨てちゃったくだりで、夢女の自分が黄色い歓声をあげました。
ファルスは「クランのみんなをイニシアチブで必要以上に束縛してないよー(例外あり)」とか威張ってましたけど、BLOSSOMSを読む限り、クランのみんなが深い友情を育むことを禁じているようにしか見えませんでした。リリーとスノウの件は露骨すぎますが、他にも「なにこれ……?」ととまどってしまう記憶の消去がありました。
でも、ファルスって3000年前はウルしか友達がいなかったし、そのウルのことも遠ざけようとしてたし、不死になってもなお他者との距離感が分からないのかもしれません。分かってたら偽りの花園なんか作らない。

2度目に観劇したとき、主にファルスのセリフが変わっていてびっくりしました。やわらかファルスがもーーっとやわらかファルスになってた。この数日の間に何が……!?
クランを全滅させ自らも自死を試みたリリーに「ウル」と声をかけてしまうセリフがなくて、え…!?と思っていたらセリフを飛ばしてしまったらしく、良いんだか悪いんだか謎の気持ちに包まれました。

ファルスの星に両手を伸ばす仕草といい、リリーを「ウル」と呼ぶろくでもなさといい、ソフィではなくアレンの血しか見てくれなかったティーチャー・クラウスにそっくりでゾッとしました。同じことをやってる自覚あるのかな…
ひとしきり喚いたあと「まあいいや」と真顔になったときのファルスの見開いた目が怖すぎて、オペラグラスを持ったまま心臓が止まるかと思いました。諦めのスイッチの切り替えが早すぎて、あの執着心はなんだったのかと恐ろしくなりました…。ウルの可能性が少しでもあるのなら異様なほど執着し、ウルじゃないなら簡単に諦められる。ていうか、ファルスにとってのウルってなんなのよ……。ウルに全てを詰め込みすぎだろ……。ウルって希望だもんね……。
スノウに本名をバラされたときのファルスも、くりくりしたおめめがギラッと光ってて好……恐ろしかったです。

初演を何度か観ているはずなのに、ラストは肩を震わせながら泣いてしまいました。
純粋で優しいリリー。クランのみんなが大好きだったリリー。信念を持ってみんなのイニシアチブを握ったリリー。みんなをファルスから解放した=殺したときちんと理解しているリリー。救済が絶望と後悔に激変していくあの歌、不死者の産声のような絶叫……つ、つらい……。
みんなの名前を3人ずつ叫ぶところが日によって違った気がするので、もしかしたらあそこは日替わりで呼んでるのかな?と思います。スノウの亡骸にすがりつくリリーがあまりにも痛々しくて目を背けたくなりました。こんなはずじゃなかったのにね……。
『黒世界(※本来の黒の字がナノだと文字化けしてしまいました)』で繭期の幻覚をこじらせてるリリーを思い出すと余計につらかったです。

パンフレットの年表、最後の部分が途方もない年月になっていて戸惑いました。ヴェラキッカのときよりもゼロがめちゃくちゃ増えてる。あの二人は宇宙の終わりを見届けるつもりなのでしょうか。

【まとまらないまとめ】
『二輪咲き』は配信で見る予定だし、お芝居そのものはすごく楽しみだけど、運営の発表方法は未だにもやもやする。余計な思い出を付け足さないでほしかった。

シルベチカがファルスと同化したら、きっと彼女(とリコリス)もリリーと同じことをしたと思う。シルベチカにはそういう正義感の強さを感じる。

U-NEXTで初演を観た時点ではマリーゴールドがなぜあそこまでスノウに殺意を向けていたのか分からなかったのですが(リリーは周囲に友達がたくさんいるのに、なんで友達ですらないスノウを?という)、BLOSSOMS読後は「君は僕で僕は君だ」の概念がマリーゴールドの中で捩じくれまくった結果なのかなと妄想しました。ダンピールと純血の吸血種にこのイコールが成り立つのか謎ですが。真実を知ろうったって、みんな死んじゃったからなあー!

『SPECTER』でハリエットを演じた役者さん(キャメリア)の「この化け物め」は息が詰まりそうになる。

ファルスはリリーが不死者になったことを知らずに放浪しているんだとばかりと思ってたけど、パンフレットを読んだかんじだとデリコ家や血盟議会から事情を聞いているかもしれない。

マリーゴールドの記憶を消さないままでいたファルスにドン引きした。(BLOSSOMSで理由をなんとなく察した)

ファルスの失敗作になりたい。あたしは色彩を失った花の下であなたが来る日を待っているわ。

今までの観劇した作品の中でも、上位に食い込むくらい印象深い公演でした。会場を出たあとも夢見心地で、あの血生臭くて嘘だらけのサナトリウム・クランに帰りたくて帰りたくて仕方がなかった。頭の中でファルスがずーっと『共同幻想ユートピア』を歌ってます。帰りたい帰りたい……。
公式がYouTubeにアップした音質画質ガビガビの『Eli, Eli, Lema Sabachthani?』を再生して凌ごうと思います。