口実なのはわかってるさ

何?お前いつからy○utuberになったの?



「チャンネル開設したばっかだ」

「で?記念すべき最初の動画は?」

「リップスティックチャレンジ」

「何それ?」



リップスティックチャレンジとは。フレーバー付きのリップを塗り、キスをしてもう一人がそのフレーバーを当てるというものだ!



「ばっっっっっかじゃねぇの!!?!?」

「関係公表してンだから別にいいだろ」

「俺児童ポルノ的にアウト!高校養護教諭!!」

「表現の自由だ、なぁ?凪ちゃん?」



 *


 *



「Hi everyone.We are yours best heros」

「っぷ…」

「お前が考えたんじゃん?!笑うなよ!」



陳腐な挨拶から始まる動画だが速効辞めたい。そして企画の説明。全部で5種類、二人とも何のフレーバーか見ていない。


で、始めるわけだけど。



「おら、袋から取れ」

「マジですんの?」



まずは俺が塗って、勝己が当てる。キスは毎日しているから恥ずかしくないけど、目の前にカメラがあるのは恥ずかしい。


睨み付ける彼に逆らえず袋から1つ取り出す。フレーバーはバニラミント。甘いのかスッキリなのかはっきりしてほしいフレーバーだ。カメラに見せてから唇塗るけどちょっとスースーする。



「塗った……」

「ん」

「ッん!?」



合図もなしに下唇を味わうのはいつものキスだ。丹念に舐めてフレーバーを考えているんだろう。集中するためか目を閉じている。



「甘ったる……」

「それだけじゃないけどね」

「ミントはわかった。甘いのは……バニラか?」

「おー正解、すげぇな」



意図も簡単に当ててしまう。もしかして簡単?タオルでリセットして今度は俺が当てる番だ。目を閉じて塗り終わるのを待つ。



「できた」

「うっし……」



唇に鼻を近づけて香りを嗅ぐ。甘いけど…フルーツ的な甘さ。キスしなくてもこれはわかるぞ。



「ストロベリー!」

「キスしてねぇじゃねぇか!!」

「わかったんだからいいじゃん!?」



味わえと言わんばかりに頭を掴んでキスをされる。勝己からニトロの甘さはいつも感じるけど、可愛らしい甘さはおかしなもんだ。



「ッは、もういいだろ」



一通り満足したらしく顎を撫でる。


次に出たのはオレンジ、その次はコーラ。これはわからなかったな。そして最後はピーチ。これだったらわかるでしょう!


このチャレンジもようやく終わる!



「最後!これはわかりやすいよ!」

「ンじゃまぁ…」



最後のフレーバー。他の香りと混ざっている気はしないでもないが絶対にわかるはず。



なのに



「んっ……ふっ、あッ、ちょっとッ!しつこい!!!そ、こまでしなくてもわかるだろ!」

「あ〜?わっかんねぇなぁ?」



下唇を吸って舐めて食むってやりたい放題。そのせいでリップフレーバー取れてんじゃねぇの?


確実に楽しむためにキスしてる。息が続かなくて力なく胸を叩くが、それさえも弱くなっていく。


動画用のキスではなくいつもの厭らしいキス。



「キスの日だから大サービスだ」



最初から視聴者を煽るのが目的だったのかよ。


最悪と思いながら最高と感じる甘いピーチ。





動画が投稿された後、チャンネル登録者数は100万を越え再生数もそれ以上となった。



そして、フォロワーの発酵化が止まらなかった。

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