今日はすき焼きだから買い出しを頼んだのはいいけど肝心のお醤油を頼むのを忘れていた。
お醤油を買って、ついでに安かった牛蒡を買って帰り道を早足に歩いていた。
………どこから間違えたんだろう、どう間違えたら…


「いたぞォォォ!!」
『早く逃げて!早く!!』


どう間違えたらパンチパーマの集団に追い掛けられるの!!
いや、私じゃない、狙われてるのはこの横で走ってるチャイナ服の小さな女の子だ。
この女の子を庇わなかったら良かったんだ、でもそんな事出来ないじゃない!!でしょう!?


「はさめェェェ!!」
『しまった…!』
「おい、余計な事すんなヨ、この人数だったららくしょ…
『どりゃぁあああ!!』


何ともこんな時に限って刀を忘れて来てしまったんだけど、安いだけあるかったーい牛蒡を構えてパンチパーマの集団に突っ込む。
そういえば女の子何か言ってた気がするけど、まぁいいかなーと思いながら牛蒡を振り回す。


『今の内に逃げて!!』
「………」


女の子は私が突っ込んだ時に出来た集団の隙間を抜けて走り去っていく。
何とかなったか、と思って一息吐いたのがダメだったのかいつの間にか後頭部に突き付けられている銃。


「ダメだね〜か弱い女の子が牛蒡なんて振り回したら。
君可愛いから教えてあげるね、世の中首突っ込む場所間違えたら……首無くなっちゃうんだよ」
『………!!』


銀ちゃん………!!












「こいつが……ボンゴレの、業………」


『え……?』


幼い頃、私の前に現れた一人の男。


『ごめんなさい………ごめんなさい!!
あやまるから………だしてよぅ……っ!!』


暗い部屋、感じる孤独と恐怖は今でも忘れられない、そして、


『ひっ!?』


響いた銃声、それに連なる悲鳴。


「来い………見てみろ、お前の親だ」


『おとーさんと、おかーさんっ!?』


喜んで駆け出した瞬間に広がった


『おとー、さん?
お、かー………さん?』


私は忘れない、決して。















「私…江戸に来たらマネーつかめる聞いて遠い星からはるばる出稼ぎきたヨ。
私のウチめっさビンボー、三食ふりかけご飯、せめて三食卵かけご飯食べたいアル」
「いや、あんま変わんないんじゃ」
「そんなとき奴ら誘われた、ウチで働いてくれたら三食鮭茶漬け食べれるよ。
私それ聞いてとびついたネ」
「なんでだよ、せめて三食バラバラのもの食べようよ」
「私地球人に比べてちょっぴ頑丈、奴らの喧嘩ひき受けた、鮭茶漬け毎日サラサラ幸せだたヨ。
でも最近仕事内容エスカレータ」
「いやエスカレートね」
「人のキンタマまでとってこい言われるようなったアル」
「いや、キンタマじゃなくて命ね命」
「私もう嫌だヨ、江戸とても怖い所、故郷帰りたい。
さっき馬鹿な女助けられたけどぶっちゃけ別に助けなくても良かたアル」
「バカだなオメー、この国じゃよォ。
パンチパーマの奴と赤い服を着た女の言うことは信じちゃダメよ。
まァてめーで入り込んだ世界だ、てめーでおとし前つけるこったな」
「オイちょっと」














「バカですかァァお前ら!!
娘っこ一人連れ戻すのに何手こずってんの!?」
『………ん……』


目が覚めたら茶屋の椅子の上だった、しかもパンチパーマの膝の上だ、キモい。
どうやら銃で撃たれなかったかわりに気絶させられたみたいだけど、最悪な状態だ。


「あ、目ェ覚めた?
君神楽と接点あるみたいだし可愛いし此処にいてもらうよォ」
『…………』
「そんな顔しても無駄だよ〜痺れ薬で君動けないし、大人しくしてな」


確かに指も動かせない、このパンチパーマだかアフロだかわからないボスらしき男の言う通りにした方がいいだろう。
でもこいつらあの女の子を使えないからといって殺そうとしてる、それだけは止めないと。
体が完全に動けるまで大人しくしていようと考えていたら、パンチパーマの集団は何故か駅に向かっていた、まさか女の子が………?



「もういい転がれ!!」
『!!』


駅のホーム、何故かゴミ箱に入ってる神楽という女の子と………新ちゃん!!
何でだろうと考える前にパンチパーマのボスが転がるゴミ箱を足で止め、嘲笑うように新ちゃん達を見下ろす。


「残念だったな神楽ぁ、もうちょっとで逃げれたのに」
「井上…!」
『…………!』
「何も言わずに逃げちゃうなんてつれないねェ、あんなによくしてやったのに。
金に困ってたんじゃなかったの?いいのかィ?ふりかけご飯の生活に逆戻りだよ?」
「人傷つけてお金もらうもう御免ヨ、何食べてもおいしくないアル。
いい汗かいて働く、ふりかけご飯もおいしくなるネ」


女の子の言葉に井上と呼ばれてアフロは夜兎族、という新ちゃんも私も知らない言葉を口にする。
夜兎族、それは驚異的な戦闘力を持つただ戦だけを嗜好する戦闘民族、その一人が神楽と呼ばれた女の子、そう井上は言った。


「薄っぺらい道義心で本能を拒絶したところで、戦うお前は楽しそうだったぞ。
お前の本能は血を求めてるんだよ、神楽」
「違うネ!!私は…


ドカッ


神楽と呼ばれた女の子が反論する前に井上は新ちゃん達が入ってるゴミ箱を蹴る、その力でゴミ箱は転がり、ゴミ箱は線路の真ん中に投げ出される。
戦えないお前に価値はない、そう嘲笑う井上、そこへタイミングが良いのか悪いのか電車が向こうから走ってくる。
私はまだ身体に痺れを感じながら倒れていた長椅子から立ち上がり線路まで走る。


「名前さん!?何で此処に……!!」
「お前また余計な事しに来たアルか!?」
『今は…喋ってる場合じゃないぃ…ふぐぅうううう!!!』


言う事聞かない腕に無理矢理力を入れてゴミ箱を持ち上げる、するとゴミ箱は力の加減を間違えたのか真上に空中を舞った。
あ、ごめん、そう言う前に私の足は痺れに負けてガクンと折れ、線路上から脱出出来なくなった。


「あらまぁお嬢ちゃん可愛かったのに残念…ま、御愁傷様、あばよ」
『………!!』


嘲笑う井上の背中を見ながら嗚呼もうダメだと絶望した時、よく知る声が聞こえてきた。


「ったく手間かけさせんじゃねーよ!!
名前!死にたくなかったら踏張って立ち上がれェェェ!!」
『銀ちゃん………!!』


銀ちゃんの言葉に何故か力が出て、ヨロヨロしながら立ち上がる。
立ち上がったと同時に銀ちゃんに身体を持ち上げられ何とか電車とこんにちはする事は避けられた。


「ったくよー、ガキ共は兎も角何で名前が巻き込まれてんだよ」
『ごめん……女の子が追い掛けられてるの無視出来なくて…』
「ま、名前の作るすき焼き食べる為だしな」
『ふふっ……ありがとう銀ちゃん』


再びホームに戻る頃には決着がついていたのか神楽と呼ばれた女の子が井上のアフロを剃っていた。
何故神楽と呼ばれた女の子が井上のアフロを剃っていたのかは理解不能だ。


「助けにくるならハナから付いてくればいいのに、わけのわからない奴ネ…シャイボーイか?」
「いや、ジャンプ買いにいくついでに気になったからよ、死ななくてよかったね〜」
「僕らの命は二百二十円にも及ばないんですか」
「いや、名前がピンチだったらジャンプなんて買いに行かなかったね」
「もう黙ってください」


素直じゃない銀ちゃんにクスリと笑っていると神楽と呼ばれた女の子…いや神楽ちゃんが此方を見ていた。
何故かその視線が不思議なモノを見るような視線で首を傾げると神楽ちゃんは呆れたように口を開いた。


「お前も馬鹿ネ、私一人どうにかなるのに助けて来たり、身体痺れてるのに助けたり。
………でもそんな馬鹿、私好きアル」
『……ありがとう!』


照れたような神楽ちゃん。
そうこうしていると電車が来た、神楽ちゃんが故郷に帰る為に乗るであろう電車だ。


「おっ、電車きたぜ早く行け、そして二度と戻ってくるな災厄娘」
『銀ちゃんそんな言い方ダメだ
「うん、そうしたいのはやまやまアルが、よくよく考えたら故郷に帰る為のお金もってないネ。
だからも少し地球残って金ためたいアル、ということでお前の所でバイトさせてくれアル」


神楽ちゃんの言葉に私は歓喜したのだが銀ちゃん達が不満だったのか反論しようとする。
だが神楽ちゃんの壁に罅が入る有無を言わさない拳に銀ちゃん達は頷く事しかできなかったのであった。


(名前、おかわり!)
(も、もうやめて…ご飯どころかお米が無くなる!!)





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